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 実はこの“現金化”に一番反対しているのが当の原告側だという。中道系紙記者の話。

「被害者側は、現金化された場合には『謝罪』がなくなるとして、あくまでも話し合いによる謝罪と賠償を求めています。また、日本の制裁措置により韓国経済がダメージを受け、日本との関係が破綻の道をたどることになれば、その原因は自分たちにあるといわれかねない。そうなるとこれまでの活動が否定されてしまいますから、現金化は実は避けたいのです」

©️時事通信社

 では、実際、大法院は日本企業の資産の売却執行を可能にするだろうか。前出記者は「可能性はありますが、高くはない」とする一方、もしそうなれば「韓国政府による緊急措置がとられるのではないか」という。

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「韓国政府が代位弁済する方法です。最終的な判決は当初9月か10月に出るだろうと見られていましたから、韓国政府はそれまでに被害者側と話し合いを進めながら、解決案をまとめる腹づもりのようでしたが、もし判決が早まれば、まず現金化を食い止めなければなりません。代位弁済が行われる可能性が高い」

韓国紙がスクープした「基金案」

 これは、韓国政府が日本企業の代わりに請求賠償金の相当額を原告側に支払う方法だ。支払った後に基金を立ち上げ、充当するのだという。

 この基金案は、元徴用工訴訟問題を解決するひとつの案として6月末に浮上していた。韓国メディアがスクープしたもので、裁判で被告企業となっていない他の日本企業と、1965年の日韓請求権協定で恩恵を受けたとされる韓国企業、そして、日本と韓国の一般個人の寄付により基金を立ち上げるという内容で、「強制動員被害者名誉回復基金」(ソウル新聞、6月29日)のような名称になるのではないかと報じられた。

 7月4日には、「被害者の話をまとめ、解決案を探る」目的で、外交省、原告の支援団体、訴訟代理人、学会専門家、メディア・経済界から構成される「官民協議会」が立ち上げられた。そして、26日には、最終判決を自制してもらうことを目的とした「この問題で外交的努力を続けている」という意見書を大法院へ提出もしていた。