元徴用工訴訟問題で、被告となっている日本企業の資産(韓国内)の売却を執行可能にする“現金化”への最終判決が早ければ19日にも出ると韓国メディアが報じ、韓国政府の動きが慌ただしくなっている。
4月の三菱重工業の再抗告を棄却するものとされ、同企業が韓国内に保有する資産5億ウォン(約5120万円)相当が対象となっている。
被告・三菱重工業は韓国内資産の押収に再抗告
そもそもの始まりは2012年10月、元勤労挺身隊員やその遺族が同企業を相手に起こした損害賠償請求訴訟だ。18年11月には大法院が原告勝訴の判決を出し、原告ひとりあたり1億ウォン~1億5000万ウォン(約1000万円~1500万円)を支払うよう被告へ命じた。その前月には元徴用工訴訟で原告勝訴の判決が出ており、共に日韓関係を揺るがすこととなった判決だ。
被告の三菱重工業は1965年の日韓請求権協定でこの問題は解決済みとする立場から支払いに応じなかったが、業を煮やした原告側は翌年の19年3月、損害賠償金として韓国内にある同企業の資産の差し押さえを大田地方裁判所に申請。その価値の最高額は8億400万ウォン(約8241万円)といわれたが、押収命令の効力が発生した20年12月末、三菱重工業は即時抗告した。
その後、21年9月に抗告は棄却され、同地裁はあらたに5億ウォン(約5120万円)相当の資産売却の執行を認める判決を出したが、三菱重工業はこの4月に再抗告していた。
売却の執行が可能になれば、日本からの“制裁措置”が
最終判決は売却の執行を可能にするといわれており、三菱重工業の資産は鑑定、競売を経て“現金化”されるが、もしそうなれば日本の“制裁措置”により韓国が甚大なダメージを受けると韓国国内は騒然。
日本政府はあらゆる措置を考慮しているとしており、韓国では「韓国への部品、素材の輸出規制の強化」、「日本の金融業による韓国企業への貸し出しや投資した日本資金の回収」、「韓国人へのビザの発給禁止」などの可能性が挙げられている。
新しく就任した尹徳敏駐日大使は8日、韓国紙との懇談会で「韓国と日本双方で数十兆ウォン(約数兆円)、数百兆ウォン(約数十兆円)のビジネスチャンスを失うことになる」と危機感をあらわにし、韓国の経済紙も国益に多大な影響を及ぼすとして「外交で解決すべき徴用工賠償 大法院に『司法自制原則』の熟慮を求める」(韓国経済、8月10日)という社説を書いた。