「今回のオリンピックでは実力と同じくらい“免疫力”が大事になる、ということですね」

 韓国の朝の時事情報番組。司会者が神妙な顔をしながらこんなコメントをしている。

 東京夏季オリンピックの開幕の1週間前には、「こんなオリンピックは初めて」(毎日経済新聞、7月16日)という記事が掲載された。

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 表彰台ではメダルは自分でかけ、得点を決めたり勝利した瞬間にコーチやメンバーらと抱き合ったりする“セレモニー”はNG、毎日受けるPCR検査でもし陽性となれば棄権扱いとなり、成績はその直前の試合でストップ……。だから、新型コロナウイルスに感染しないよう、免疫力をアップさせなければならないという話だ。

ワクチン接種を受ける文在寅大統領 ©getty

「オリンピックどころではない」ほとんどの韓国国民は無関心

 コロナ禍での開催となり異例づくしの今回のオリンピック。世論調査会社「イプソス」が世界28カ国を対象に行った世論調査では、世界の57%が東京五輪開催に反対した。なかでも韓国は86%と日本(78%)よりも反対する声が多かった。

 背景にあるのは、新型コロナウイルスの蔓延という安全ではない環境に選手を送り出すことでパンデミックが拡大するという憂慮からだが、当初から開催自体に反対する声は出ていた。旧日本軍を美化するとして「旭日旗」のオリンピックでの使用に抗議する声は数年前から出ており、最近では、オリンピックの公式HPに掲載された地図に竹島(韓国では独島)が記載されたことでにわかに「領土問題」が浮上した。

 韓国では来年の大統領選挙を見据えた次期大統領選挙候補者らが「福島汚染水放出問題」を俎上にあげ、「領土問題」と合わせて五輪参加ボイコットを声高に叫ぶなどスポーツの祭典という雰囲気はどこへやら、政治・外交絡みでもみくちゃに。

 なによりも、韓国では7月の第2週からデルタ株による新型コロナウイルス感染者が急増し、ワクチン確保の遅れから接種遅れが生じていることへ苛立ちが生じている。さらに19日には、アフリカのソマリア沖に派遣中の韓国軍の駆逐艦に乗艦している隊員全体の82%が感染していることが発覚。

 乗組員全体の30~40%ほどが徴兵制による従事者で、その後検査体制の不備やワクチンが送られていなかったことも分かり、世論の怒りが爆発しており、「オリンピックどころではない」雰囲気も漂う。

 一方、オリンピック関係者は着々と準備を進めてきていた。

「金メダルは7個以上、総合成績は10位以内」

 6月28日、「2020東京オリンピック大会メディアデー」と題して代表団(といっても壇上に並んだのは大韓体育会長、東京オリンピック選手団長など数人だったが)がこう東京オリンピックでの目標を語り、黙々と練習を重ねている代表選手の様子なども伝えられた。代表選手は3月にはワクチンの優先接種が決まり、4月頃からワクチン接種が進められていた。全国紙の運動部記者は言う。

優先的に接種を受けたオリンピック出場予定選手 ©getty

「本来ならば大がかりなイベントを開いて盛大に行うはずが、残念でした。しかも、韓国では新型コロナウイルスの防疫ばかりに気を取られて、東京オリンピックにはほとんどの(韓国)国民が無関心。選手にはこれが一番つらいのではないでしょうか。