韓国国民が東京オリンピックに反対していた理由のひとつが、福島で競技を行うことと、福島産の食材を使った料理を選手へ供給するということだった。韓国では2011年の東日本大震災により起きた福島第一原発事故に関連して、当時、その放射能の脅威がことさらフォーカスされた。当時、人気のあった日本製の赤ちゃん用オムツや化粧品までも放射能の被害があるとされて、忌避されたほどだ。
食材に関しては根強い忌避感が残っていて、韓国では福島県産食品の輸入を今も一部停止している。
オリンピック直前に実感する最悪の日韓関係
さて、オリンピックとは別の話だが、最後まで燻った文在寅大統領の訪日騒ぎ。「首脳会談開催」から「会談での成果」にこだわった韓国と、そもそも会談に消極的で徴用工問題などでの解決策など “手土産”がなしでは15分程度の会談としていた日本との間では報道合戦が繰り広げられた。
さらに、この渦中、駐韓日本大使館の外交官が韓国メディアとのオフレコを前提とした席で文大統領の訪日騒ぎは「マスターベーション(自慰行為)」と発言したことが報じられた。外交官は謝罪し、駐韓日本大使も遺憾を表明した。この発言の意図は、文政権が独り相撲を取っているというもので表現は不適切だったが、実は、韓国の記者からも同じような声は上がっていた。中道系紙記者の話。
「韓国政府は韓日の3大懸案事項(元徴用工・元慰安婦問題、日本による輸出規制問題、福島原発汚染水放出問題)を今回の首脳会談で話し合うとして、まず韓国への輸出規制を規制前に戻すことを要求していました。
GSOMIA(軍事情報包括保護協定)運用の安定を交換条件としたという話もありましたが、日本の輸出規制は元徴用工問題などの歴史問題と連動しているため簡単には解決できないことはわかりきっている。成果が見込めないのになぜ訪日するのかという批判が国内でも高まると今度は成果を求めるとした。
文大統領が今回訪日するにあたっては2018年の平昌冬季オリンピックに当時の安倍首相が訪韓した返礼という大義名分だけで十分でした。それをあえて会談にこだわったのは、韓国側が日本との関係改善の努力をしていることを印象づけるためでアピールの相手は米国であり、韓国世論。日本側が受け入れなくとも重要なのは努力している姿をみせること。来年の大統領選挙でもポイントになる。
指摘されたとおり、文政権の独り芝居でした」
結局、「成果が十分に見込めない」として文大統領の訪日は見送られた。韓国では、先の日本人外交官の発言が訪日取りやめの大きな原因となったとするメディアや高官もいた。しかし、文政権が世論にもメディアにも追い詰められていた状況を考えれば原因をそこに求めるのは都合がよすぎるだろう。
オリンピック前の韓国の雰囲気をこうしてざっと見てみると、最悪だといわれる日韓関係をしみじみと実感させられる。世界の目がコロナ禍でのオリンピック開催に注がれ、その防疫体制や大会運営の手腕にも注がれる中で、日韓だけが別のものを見ている。