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 そして、前出の「官民協議会」では「謝罪と賠償」を原則とする原告側との話し合いも止まったままだ。韓国政府が大法院に意見書を提出した際には、事前に知らされなかったと原告側が協議会への参加をボイコットした。

 さらに原告側はあらたに「外交的保護権」についての質問を韓国外交省に提出もしている。これは「国民が他国の国際的な違法行為によって損害を受けた場合、当該国が相手国へ責任を追及する国際法上の権限」で、韓国外交省はまだ返答していない。日本とのあらたな障壁になるのかと思われたが、国際法などに詳しい大学教授はこう解説する。

「韓国政府も1965年の韓日請求権協定の対象範囲に強制徴用被害者への補償を含めていましたから、すでに外交的保護権を行使したことになります。ですから、被害者側が外交的保護権の条件を満たしていないので成立しません。それよりも逆に、もし、日本企業の韓国内の資産が売却されることが決まれば、日本企業が日本政府に対してこの外交的保護権を問うことになるのではないでしょうか」

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日本側が取るべき態度は…

 では、最終判決は19日にも出るのか。前出記者は言う。

「大法院関係者は、19日から26日の間に最終判決を出す可能性もないことはないが、もう少し熟慮することになるかもしれないと判決の延期をほのめかしていました」

 いずれにしても日本企業の韓国内資産の現金化への動きは、この問題の“終わりの始まり”になる。

 8月15日、韓国の光復節(日本の終戦記念日)で注目された演説で尹大統領は日本についてこう触れた。

 かつて植民地支配をした日本は「今世界の自由を脅かす挑戦へ立ち向かう、共に力を合わせて進まなければいけない隣人」であり、日韓関係は「普遍的な価値を基盤として両国の未来と時代がもたらす使命へと進むとき、歴史問題も十分に解決できる」とし、元徴用工訴訟問題などへの解決へ強い意志を表した。そして、「包括的未来像を提示した金大中・小渕共同宣言を継承し、韓日関係を早くに回復し発展させます」と日韓関係改善への意欲を隠さなかった。

 苦境の中でのこのアプローチ。日本も呼応すべきではないだろうか。経済協力金を払ったのだから終わり、というのは、やはり十分ではないだろう。