5月10日、韓国で尹錫悦新大統領が就任し、新政権がスタートした。
就任式の国内外の招待客は4万人ほど。外賓は、日本からは林芳正外相、米国はハリス副大統領の夫であるダグラス・エムホフ氏、そして中国からはナンバー2の王岐山国家副主席らが出席し話題となったが、なんともシュールだったのは、文在寅前大統領から少し離れた席に、尹大統領が検察時代に逮捕に追い込んだ朴槿恵元大統領の姿があったこと。5年前のあの弾劾時のキャンドルデモからは予想もできなかった光景だった。
ソウル地方高等裁判所で注目されている、ある判決
大統領就任早々、林外相が岸田文雄首相の親書を渡したシーンも、文前政権では考えられなかったものだ。新大統領府関係者は「壊れた外交の立て直しが急務」と何度も口にしており、尹政権の外交ラインの顔ぶれからも「日米韓関係重視」が読み取れる。
メンバーは親米派でかためられており、「外交分野においては北朝鮮との関係を第一とし、対話に重きを置いた文前政権とはDNAがまったく異なるといっていい。新しく外相となった朴振氏の英語の実力はネイティブ並みといわれ、日本語も堪能なことでも知られる」(韓国紙記者)。
尹政権が日本との関係改善に大きく旋回する中、ソウル地方高等裁判所のある判決が韓国で注目を集めている。
「慰安婦合意」破棄の経緯にウソはあったのか?
2年前の2020年5月、保守系の弁護士団体「韓半島の人権と統一のための弁護士の集まり」が韓国の外交部を相手に起こした裁判で、当時、元慰安婦を支援する活動の中心にいた挺身隊対策協議会の尹美香前代表と外交部の、「慰安婦合意」に至るまでの面談の記録公開を求めたもの。同団体のキム・テフン代表の話。
「合意の後、尹美香代表(当時)は、『合意の内容についてはまったく知らされなかった』と話し、当事者である元慰安婦らの意見はまったく反映されなかったとして、その責任を韓国政府と日本に求めました。
これによって当時の韓国政府の信頼は失われましたが、その後、(韓国の)外交部の関係者と尹代表が何度も面会していたことがメディアで報じられました。加えて、当事者のハルモニが尹代表は内容を知りながら何も伝えなかったと証言しました。事実を明らかにすべきだと判断し、外交部へ情報公開請求を起こしました」