1ページ目から読む
3/4ページ目

 この協議会では前出の「代位弁済案」が取り上げられていたが、「謝罪が先。なぜ被告企業が抜けるのか」として原告側は反発。韓国の一部メディアは韓国の民法により債権者(原告側)の承諾なしでは「不可能な方法」と報じていた。これを受け韓国外交省まで「代位弁済は不可能かもしれない」とコメント。

 一体どうなっているのかとあらためて民法に詳しい弁護士に確認してみると、「可能な方法」であり、「それも精査していないのであれば外交省は何を準備してきたのか、あきれる」とこう話す。

「代位弁済で原告の承諾が必要なのは、代わりに支払う者がその意志がなく資金もない場合です。支払う意志もあり資金もある韓国政府が払うのに原告からの承諾は要りません。ただ、日本企業からの承諾はとらないといけません」

ADVERTISEMENT

代位弁済が行われた場合の逆風

 しかし、“現金化”を防ぐために原告側の承諾なしに「代位弁済」を実行すればその逆風は計り知れないといわれる。なにより心許ないのは尹大統領の支持率の低さだ。

 最高でも53%ほどだった支持率は、就任間もないハネムーン期間というのに人事や経済不振などでみるみる下がり、ついに25%に落ち込んだ(韓国ギャラップ、8月12日)。韓国大統領の支持率は時々の事案によって激しく浮き沈みするが、この下がり方は岩盤層をも割っている。山積する課題を乗り切れるのか。 

 こんな状況の中、現在、野党「共に民主党」の党代表選挙を繰り広げている李在明議員は韓国政府が大法院へ意見書を提出した際には「日本政府と企業が責任を認めず、時間を稼いでいる状況で、韓国政府は外交的解決を理由に責任を回避する根拠を準備している」と自身のFacebookにさっそく書き込んだ。もし、代位弁済が行われれば、“親日(日本の植民地時代に日本に協力した韓国の人々)政権”と尹政権を執拗に攻撃するだろう。

 また、韓国紙が報じた解決案の基金総額300億ウォン(約30億円)についても反発の声が挙がっている。この数字は、2018年10月30日の元徴用工訴訟の判決から有効期間である3年間に起こされた同一訴訟70件あまり、原告の元徴用工や元勤労挺身隊員やその遺族およそ300名あまりに補償する金額だった。しかし、ここに含まれていない元徴用工や勤労挺身隊員などから「自分たちは対象ではないのか」と一斉に反発の声が挙がった。