SMAPのほかのメンバーとくらべて、自分は器用ではないという自覚もあった。その思いが、先述のような入念な準備にもつながっている。ある対談では、《しゃべりも芝居も歌も踊りも、僕はテクニックがほんとにないんで、ちゃんと準備だけすれば何とかなるという気持ちで臨んでますね》と語っている(『週刊朝日』2008年11月28日号)。
MCだけでなく、俳優としてもこれまでさまざまな難しい役どころに挑戦し、高い評価を得てきた。それも彼に言わせれば、《会社(ジャニーズ事務所)が大きくて、お仕事をいただける環境に恵まれてきたけれど、僕より演技がうまい人や努力をしている人はごまんといる。一体これでいいのかなと、いまだに感じますね》ということになる(『AERA』2013年9月16日号)。いまにして思えば、こうした自問が、のちの事務所からの独立への布石となっているようにも読める。
SMAP解散後「燃え尽きた」
独立を発表した一昨年の記者会見では、SMAP解散後、「燃え尽きた」という気持ちもあったと明かしたうえ、《20代、30代のようなギラギラした感じがいつ自分から湧き出てくるものなのかなと思っていて。時間が経てば自然に出てくると思っていたんですけど、1週間、2カ月、3カ月……半年が経っても『よし、次』というような感じにならなかったのかな。それで2年が過ぎたときぐらいからそろそろ考えなきゃいけないなと思い、1人になって環境が変わればそういうものも湧き出てくるんじゃないかという期待もあって。お世話になった会社を辞めてでも環境を変えなくてはいけないと思ったのが要因の1つ》と、その決断にいたるまでの経緯を説明していた(「音楽ナタリー」2020年2月21日配信)。
仕事に関して自分をけっして甘やかさないのが、中居正広という人間なのだろう。ドラマ『ATARU』(2012年、TBS系)でサヴァン症候群の主人公を演じると決めたのも、このとき打診されていたドラマの企画のなかでも同作が一番しんどいと思われ、演じる自分の姿も想像できなかったが、《でも、僕に想像できるものなんて視聴者の方々にもイメージが見えちゃっているわけで。それは面白くないだろう、と》判断したからだった(『AERA』2013年9月16日号)。
ときにリスクを恐れず、果敢に挑戦する姿勢は、バラエティ番組でも変わらない。2011年にスタートした『中居正広のミになる図書館』(テレビ朝日系)は、2017年に夜11時台からゴールデンタイムに移動するにあたり、中居自らの提案で生放送となった。テレビで放送できる言葉や表現が昔とくらべると格段に厳しくなるなか、生でやることに、スタッフからは慎重な意見もあったようだが、中居は《ホントに面白いものや活気あるものは、リスクと背中合わせの中からしか生まれないんじゃないかなって。腹くくって気概を持ってやるのは、いいなぁと思います》と意気込みを示した(『ザテレビジョン』2017年8月25日号)。