「『メイのバカ!』って言ってもらえますか」と…
――唐突ですが、「メイのバカ!」というセリフがものすごく好きで。
日髙 皆さん、そうおっしゃるんです(笑)。「メイのバカ!」って言ってもらえますかというリクエストがすごく多くて、私にはそれが驚き。なぜでしょうね。
――お母さんは入院中で、メイもまだまだ手が焼けるからお世話をしなくてはいけない。「メイのバカ!」という感情の爆発で、どこかで無理をしていたサツキの心情がひしひしと伝わってきます。
日髙 何となく、私は「まっくろくろすけ出ておいで~」あたりが皆さんの好きなセリフなんじゃないかなと思っていたんですよ。
――日髙さんにとって、大切にしているセリフはありますか?
日髙 「お母さん、死んじゃったらどうしよう」。井戸のところでおばあちゃんにそう言って、ウワーンと泣くところのセリフですね。日頃我慢しているサツキちゃんの緊張の糸みたいなものが切れて、自分の感情が一気に出てしまう。音響監督の斯波(しば)さんからも「そういう思いを出してください」と言われて、非常に意識して頑張ったシーンです。
――『トトロ』でサツキ役を演じられたことで、日髙さんにとって何か心境の変化はありましたか?
日髙 アフレコをした時、私は26歳でしたけれども、当時のインタビューで「将来結婚して子供が生まれたら見せたい映画です」なんて話しているんです。それから8年後に子供が生まれて、そういう瞬間もやってきました。
子供と一緒に『トトロ』を見ていると、座っておとなしくして見ていないんですよね。メイちゃんと同じ動きをしながら見るんです。メイちゃんがまっくろくろすけをパーンってつかむ動きを真似して「取った!」と叫んで、家の中を走り回るんです。「こんな映画の鑑賞の仕方があったんだ!」と、何ともいえない感慨にふけりましたね。今ではその息子も社会人になりました。
それって、いろんな家庭でみられた風景だと思うんですよ。そうやって皆さんが幼い時から見てくださって、それぞれが歩んでいく道のどこかに『トトロ』という作品がある。それだけ長く愛される作品に出演できたという、そのことが自分にとっての宝物だなって。
(#3へ続く)
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