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トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由

トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由

遺品整理人・小島美羽さんインタビュー#2

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 遺品整理人として3000件以上の遺品整理・特殊清掃の現場に携わってきた小島美羽さん。“孤独死”の問題を伝えるために作ったミニチュア作品が話題となり、多くのメディアに出演している。

 そんな彼女が企画・原案を務めた『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』(竹書房)が、2022年8月25日に出版された。

 小島さんがミニチュアを作るきっかけとなった、日本における“孤独死”の現状とは一体どのようなものなのか。漫画の中でも描かれる彼女の体験について、改めて詳しく話を伺った。(全2回の2回目/前編を読む

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自作のミニチュアを持った小島美羽さん ©西邑泰和

◆◆◆

ミニチュア作品を作る理由

――小島さんが制作されているミニチュアについてお伺いします。トイレから黒い水が溢れ出している作品がとても印象的でした。どういう意図で作ったのでしょうか。

小島 私が作るミニチュアは1個1個に伝えたいテーマが決まっていて、これはヒートショック(気温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こること)によるトイレでの孤独死をテーマにした作品です。

ヒートショックによるトイレでの孤独死をテーマにした小島さんのミニチュア作品 本人提供

 ヒートショックって突然来る病死というよりは、防げたかもしれない死だと思うんですよね。もしかしたらここで亡くなった人は、大切な人たちとこの先も一緒に過ごせたかもしれない。そういう思いを込めて、ヒーターを置くとか、素足で廊下を歩かないとか、予防策を詰めたミニチュアになっています。

――遺品整理・特殊清掃のお仕事をしている小島さんが、ミニチュアを作っている理由について教えてください。

小島 死に携わる様々な業界の会社が自社の製品や企業情報をアピールできるイベント「エンディング産業展」に出品したことがきっかけです。

 最初は見た人がショックを受けないように、体液などが写っていない作業中の写真を見せながら来場者に説明したんですよ。でも、核心に迫ったところを隠しているので、どうしても伝えたいことが伝わらないんです。話を聞くだけでは、どういう現場があるのかとか、どういう人が亡くなっているのか、想像がつかないと思うんですよ。

小島さんのミニチュア作品 本人提供

 それに、最近は関心を持つ人も増えていると思いますが、以前は孤独死に対してあまり興味がない人が多かったんです。どこか他人事だと思ってるんですよね。私が説明しても「流されてるな」とわかってしまうぐらい、聞いてくれないんです。