けど今回はまったくそんなことを考えず、時間を無視してムキになれたっていうか(笑)。もっといえば、素直に楽しかったですね。テレビの仕事のボリュームを落として、ようやくこういった感覚を得ることのできる時間ができたというか、このスピード感にもっと慣れて、この状況でしか生まれない発想がもっと出るようになっていけば、仕事の配分を整理したことも無駄にはならないのかなって。
――なるほど。新しい気づきがあった、と。
坂上 今まではタイトなスケジュールのなか、ロケに行ってスタッフさんから「はい、ここで」と声を掛けられると「もうちょっとやらせてよ!」と抵抗するんです。組まれた段取りを壊すことによって、いかにその画に血を通わせるのか。そんなことを考えてやっていたんですけど、今回は抵抗をする必要もなくゆっくりとした時間が流れていましたねえ(笑)。
坂上忍が50年間芸能界にいて見つけたこと
――農家での様子を見ていて感じたのは、坂上さんの仕事へのアプローチはすべて本気だなということです。だからこそ批判を受けようとも求心力があるんだ、と。芸能生活も約50年になりますが、テレビの世界で確立した自身のスタンスみたいなものってありますか。
坂上 ドラマもバラエティも根っこのところはあまり変わらなくて、スタッフとよく話しているのは「結局、本気に勝るものはない」ということですね。もちろん例外はあるけど、数字を取れる番組って、そういった傾向があるんですよ。
例えば『イッテQ!』とか、あれは信じられないようなロケ時間を使って本気で作っているから評価を得たんじゃないかなって。また僕がやっている『坂上どうぶつ王国』もしかり、あれは最初から僕が本気で動物保護ハウスを作ることありきでスタートしているんです。『バイキング』が終わって、その労力を『坂上どうぶつ王国』で払えるようになって本気が映せるようになってくると、やっぱり数字って反応するんですよね。
「本気は人の心を動かすと信じたいし、その理想論はなくしちゃいけない」
――何事にも本気になることが大事だと。
坂上 昔の映画やドラマの監督って、役者を本気にさせるのが上手かったんですよ。怖かったし。