そこにあるものって、要するに“本気”なんですよ。本気の監督から「てめえ、どんだけくだらない芝居やってんだ!」って言われたらかなわないじゃないですか。「そうか、せめてこの人に近づくような本気にならなきゃダメなんだ」って子ども心にだって思うわけですから。本気は人の心を動かすと信じたいし、その理想論はなくしちゃいけないと思っています。だからこそ結果を残さなくちゃいけない。
ただ、年齢が上がった僕の立場であえて若い人たちに言うのであれば、「戦う気持ちも捨ててはダメ」ということも伝えたいんです。
「やっぱり戦うときはしっかり戦った方がいいし、見ていてくれる人が必ずいてくれるって僕は信じたい」
――戦うべきときもあると。
坂上 自分の信念をかけるところでは、やっぱり戦うときはしっかり戦った方がいいし、そういう場面を見ていてくれる人が必ずいてくれるって僕は信じたいんですよ。「あいつ、叩かれているのにすげえ頑張ってるじゃん」って。
姿勢や感情って動いていると人の目に止ることが多いし、それが縁で全然関係ないところと繋がったりもしますからね。
僕はこれまでも反発するときはめちゃくちゃ反発していました。でも、誰かが見ていてくれたから、まだここに居られる。若い頃からこの調子ですから、そうじゃなかったら僕なんかとっくに消えていますよ。
――そこは中高年の人も若い人たちをしっかり見てあげていないといけませんね。
坂上 若いときは、上の人間に「今どきの若いやつらは」なんて言われて、うるせえなって思っていたんですよ。けど実際50歳を過ぎて、ましてやここまで何を言われても従うだけの無関心な世の中になると、逆に「今どきの若いやつらは」って言った方がいいのかもしれないって思いはじめたんです。
恥ずかしがらずに、昔のいい部分を伝えてあげる。最終的にチョイスをするのは若い子たちの自由だし、そこは彼らに任せればいい。だから嫌われてもいいので、どんどん「今どきの若いやつらは」って言っていこうと思います(笑)。
写真=石川啓次/文藝春秋
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撮影協力=角館山荘 侘桜