「CDが売れない時代になった」と言われて久しくなりました。
ところがそんなことはどこ吹く風と言わんばかりに、ジャニーズのCDは売れまくっています。2021年、ジャニーズはシングル・アルバムともに過去最高の売上枚数を記録しました。オリコンの年間シングルランキングを見てみると、1位がSnow Manの「Grandeur」でミリオン達成。2位と4位もSnow Manが占め(「HELLO HELLO」、「Secret Touch」)、3位にはなにわ男子の「初心LOVE」がランクインしています。シングル・アルバム両方のトップ25のうち、それぞれ11枚をジャニーズのCDが占め、堂々たる存在感を示しています(データはオリコン準拠)。
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気がつけば同じ曲のCDが複数枚なんてことも
なぜジャニーズのCDは売れるのでしょうか?
大前提として、「CDを買うしかないから」という事情はあります。一部の例外を除いて、ジャニーズの新譜はダウンロード販売がなく、“CDのみ”で発売されるので、新曲を聴きたければCDを手に入れるしかありません。「聴きたい曲だけダウンロードする」という選択肢は、原則として無いのです。
ただ、それだけに留まらない理由ももちろんあります。
ジャニーズに限りませんが、多くの場合新譜は初回盤A・初回盤B・通常盤の3形態が用意されます。各盤はジャケットデザインが異なり、収録内容や特典グッズも違うことが多く、コンプリート欲を刺激します。これに加えて通常盤の中にも初回仕様、ファンクラブ限定盤、特典の異なる量販店オリジナル盤、コンサート会場限定盤などがラインアップされることもあり、気がつけば同じ曲のCDが複数枚……なんてこともよくあります。
近年のCD売り上げアップには、大きく3つの要因があると考えられます。それは「CDを買うことの“イベント化”」、「コロナ禍による特典の配信化」、そして「世界観の合体ロボ化」。
ひとつひとつ見ていきましょう。
まず、「CDを買うことの“イベント化”」。
ジャニーズの新譜の発売が決まると、SNSのトレンドには必ずと言っていいほど「予約完了」という言葉が躍ります。これが発売前日には「フラゲ完了」になり、当日には推しのアクリルスタンドを添えて全形態のCDを並べた写真や、「店舗予約分を取りに来たら初回盤はもう売り切れ!」などとCDショップの様子も拡散されます。
CDショップも来店したファンが楽しめるように工夫をこらしたコーナーを設けたり、特別なメッセージが印字されるレシートを用意してCDを買うことのイベント化を後押しします。
さらに「さっきもう一度タワレコに寄ったら在庫追加されてた!」などのツイートがあろうものなら、「あとで買いに行きます」「私も行きます!」と推しの新譜を完売させたいファンたちが“追い買い”を表明し、店頭に並んだCDをすべて買いきろうとするファンと、倉庫から品出しする店員の間にいつしか友情めいたものが生まれたり……。そしてついに在庫が尽きたときに、店中にファンの健闘を讃える拍手が巻き起こるといったこともありました。