ライバルとの争いは「枚数の暴力」でしか勝負がつかない
また、ネットでも「どのタイミングで購入すればランキングに反映されるか」などの情報が共有され、「推しに“1位”をプレゼントしたい」と願うファンの財布のヒモをゆるめます。CDが“投げ銭化”している、とも言えましょうが、現代のファンは応援の気持ちをお金で示すことに疑問を持ちません。またジャニーズ内外を問わずライバルグループとの争いは結局のところ「枚数の暴力」でしか勝負がつかないことを知っており、晴れてランキング1位やミリオン達成などの成果が出れば、「私も貢献したんだ」という高揚感がファンを満たします。
このようにCDを買った結果が可視化・数値化され、推しと自分の誉れになることは、ゲームのミッション攻略に通じるものでもあるのです。
ふたつめが「コロナ禍による特典の配信化」です。
コロナ禍以前は、新譜購入の特典として握手会やハイタッチ会など接触系のイベントがよく用意されていました。しかし人気グループであればあるほど、CDを買ったうえで“抽選に当たらなければ参加できない”場合も増えてきます。しかしこの抽選が、ファンにとっては実は負担感の大きな仕組みでした。
かなりの枚数を買ったのに落選した人は、「1枚しか買ってないけど当たった!」という人を見て虚しさに胸をかきむしり、「もうあんな気持ちになりたくない」と沈みもします。もちろん、「次こそは!」と、より闘志を漲らせる人もおりましょうが、むやみに戦って傷つくことを避ける人は少なくないのだと思います。
「運のいい、一握りの誰かが得するイベント」より、「みんなが同じ楽しみを共有できる催し」のほうが安心してお金を払えるという気持ちはよくわかります。
そして特典を接触系から配信に変更することで平等を実現した事例が、2022年1月21日に配信された「SixTONES・Snow Manデビューから丸2年記念カウントダウン スペシャルイベント」でした。
2020年1月に同時デビューしたSixTONESとSnow ManのデビューCD「Imitation Rain/D.D.」と「D.D./ Imitation Rain」は合算で発売初週にミリオンを達成しましたが、その購入特典として企画されていたのが「スペシャルイベント+ハイタッチ会」(全国4都市・計8公演に抽選で招待)でした。デビュー記念イベントということでファンも気合いが入り、皆しこたまCDを買って当選発表を待っていましたが、コロナの猛威で公演自体が見送られてしまいました。