「推しホスト」のために高額を支払う女性たち
ホストのアイドル化がホスト業界に持ち込んだのは、異業種界での有名人の参入だけではない。女性客らに「ホストを推しとして、応援する」という意識変革をもたらしたのも、ホストのアイドル化が一因にある。それは歌舞伎町を代表とする、多数のホストクラブを擁する繁華街のあちこちにある看板や、街中を走るアドトラックを見れば一目瞭然だ。
それらの媒体にビジュアルが掲載されるのは、月間や年間の売り上げのトップグループにランクインしているホストたちで、その中でもナンバーワンは、ことさら大きく煽られる。これは、一世を風靡した女性アイドルグループAKB48が、かつて行っていたシングル選抜総選挙と似通ったシステムだ。
AKBグループによるシングル選抜総選挙は、投票によってシングルの楽曲を歌うメンバーが選出されるシステムで、ゆえにファンたちは自分の推しの順位をあげるために投票券の封入された特定のCDを複数枚買う。それと同じく、ホス狂いたちは推しのホスト=担当をナンバー入りさせるために、シャンパンや高額ボトルをおろす。
握手会やシングル総選挙などのイベントを絡め、メンバーそのものを売りにしてCDの売り上げにつなげるAKB商法は、あちこちでバッシングされた(そもそもAKB自体が、キャバクラのステージを参考にコンセプトを立てられたという噂もある)が、ホストクラブもまた、ホストそのものを売りにして飲食代の売り上げにつなげている。
ファンにとって“推し”を応援することは、イコール金銭をなげうつことであり、その金額が多ければ多いほど熱度が高いという証明にもなる。普通は聴かないCDを買ったり、飲まない酒をオーダーしたりはしないが、そこに「推しへの投げ銭」という名目が乗ることによって、AKBのファンらは開封すらしないCDを何十枚何百枚も買い、ホス狂いは開封すらしないボトルをおろす。自らが消費できる限度を超えた物品を、課金のために購入する仕組みができあがっているのである。
いったい何がきっかけでサヤカは“推す”という文化を身に着けたのか。それは家庭環境が原因だったという。