「先月は16万、今月11万以上使ってるので、生活費以外は『全すっぱ!』ですけど……」
給与は手取りで20万円未満にもかかわらず、その半分以上をホスト通いにつぎ込む保育士の希美(仮名・37歳)さん。彼女がそこまでホストクラブにのめり込む理由とは? 作家の大泉りか氏の新刊『ホス狂い』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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高3から「ゲイバー」通い
「ホス狂いの基準は、通ってる回数が多かったり、使う額が多い人を指すらしいですけど、わたしは少額しか使わないし、月に1、2回しか通っていないので、ホス狂いとはいえないようです。先月は16万、今月11万以上使ってるので、生活費以外は『全すっぱ!』ですけど……」
そう謙遜する希美(仮名・37歳)の職業は、都内の保育園に常勤で勤める保育士だ。保育士といえば激務なのに給料が安いと、よくメディアでも取り沙汰されているが、希美の給料も、手取りで20万円未満だという。
勤務先の寮に住んでいて光熱費込みの住居費は1万円と負担は少ないので、給料の8割~半分以上をホストクラブに注ぎ込むことができてはいるが、まさに『全すっぱ!』(ナンバーワンキャバ嬢を経て、歌舞伎町のホストクラブの経営に携わり、人気店へと導いた経歴を持つ実業家の木内敬子が作った造語で「気合いを入れてすべての力を出しきる」という意味)であり、身を削っているという意味で十分にホス狂いといってもいいのではないかと思うのだが、どうして昼職の希美は、ホストクラブに通うことになったのか。
「もともとわたしは東京育ちなんですが、新宿二丁目のゲイバーに高校3年生の頃から通ってたんです。港区の女子校だったのに、放課後、わざわざ新宿まで出て。高校卒業後は大学に進むのに一浪したんだけど、その予備校が西新宿だったので、やっぱり二丁目には、さぼってよく通ってて。昼の3時からやってるゲイバーがあって、チャージなしで一杯500円だったんですよ。
だからその当時から新宿には馴染みがあったけど、歌舞伎町は近くて遠い場所って感じで。90~00年代のテレビでのホストの取り上げ方が、ブラックっていうか、売れてないホストは先輩に飲まされまくるとかの、あまりよろしくなかったのもあったし、ある程度稼いでないと、高くて行けないイメージもありましたよね」