「会いたいホストに会いに行く」という一本釣り方式に
37歳の希美にとって、20歳の大学生は考え方も行動も、あまりに幼な過ぎた。
が、希美には、翌々月に迎える自分の誕生日に、どうしても叶えたいことがあった。ホストクラブでシャンパンを入れ、コールをしてもらいたいと考えたのだ。
シャンパンを入れるに相応しい、新しい担当を早急に作る必要があったが、前の担当のようなことがあっては、お金や時間の無駄である。その反省を踏まえて希美は、闇雲に初回を回るのではなく「会いたいホストに会いに行く」という一本釣り方式に改めることにした。あらかじめSNSで話してみたいと思うホストを探し、DMでやりとりとしたあとに、初回を使って会いに行くという方法だ。
「IはYouTubeに出演しているのを観て、興味を持って。それで会いに行って初回で話したときに、ちゃんと会話ができる人って印象を受けたんです。LINEの文章も優しくて。だから翌月も指名して飲みに行きたかったんだけど、シャンパンのお金を貯めないといけないし、仕事も忙しくて行けなくって。だから2回目に行ったのは、わたしの誕生日。そこで初めてシャンパンをおろして、シャンコ(シャンパンコール)もしてもらったんです。当日までは誕生日だってことは言わないでおいて、マイクで『今日は誕生日なので、もしよかったら、Iさん閉店後の時間をください』って言って」
おろしたシャンパンは小計5万円。税込みで10万円。じつに希美の給料の半分以上だ。それに見合った価値はあったのだろうか。
「怖かったです(苦笑)。小計50万以上だとオールコールってキャスト全員が来てくれるんだけど、小計5万円なら来ても3、4人だと思ってたんですよ。けど、そのお店はキャストが多いのもあって、2、30人来ちゃって。そんな大勢の男性に囲まれるって、怖いしかなくて(笑い)。それに4時間もお店にいたのに、Iは5分くらいしか卓に付いてくれなかった。わたしがマイクで言ったとおり、アフターでバーには連れていってくれたけど……」
ホストクラブでは、どのテーブルにどれだけの時間、滞在するかは、ホスト自身の裁量に任されている。店側がどの席で接客するのかを采配するのではなく、ホスト自身がどの席につくのかを判断するのだ。女性客側はそれを知っているからこそ、担当が別のテーブルに行ったまま、なかなか自分の席に戻ってきてくれないことに疑心や不満を抱く。
むしろ席につかせるために、高いボトルを入れて否応なく呼び戻したり、もしくは反対に、物分かりのいいふり――深い絆で結ばれていると信じているわたしは待っているから、ほかのタダの客に愛想よくしてあげて。あなたの売り上げのために――といったスタンスで対峙する。しかし、前者は軍資金が必要だし、後者は自分を犠牲にすることになる。どちらにしても相応の痛みが必要だ。
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