謎のお金持ちがフェードアウト
――どう客層が下がっていくのでしょうか?
荒木 最初は、VIPに謎のお金持ちがいるんですよ。話を聞くと、古美術商とか不動産業とかをしているらしいんだけど、“謎の金持ち”。そこに、芸能人とかモデルなんかもやってくる。
一方、普通のフロアには、一流商社マン、広告代理店やテレビ局勤務のエリート男性みたいな人が集っている。女性の中にも、もちろん商社勤務といった女性もいるんだけど、レースクイーンや“ちょいタレ” (ちょっとだけタレント)みたいな人が多かったかな。私も“ちょいタレ”の部類……すごい売れている感じじゃないから(笑)。で、どう下火になるかというと、まず一番上の層がいなくなる。
――謎のお金持ちたちがフェードアウトすると。
荒木 そう。謎のお金持ちと芸能人、モデル系が引き始めるんですよ。飽きちゃったんでしょうね。そうすると、次に属していたスーツ系エリートたちが一番上になる。しばらくすると、今度は彼らがいなくなる。その間に、「ジュリアナって店が流行ってるらしいよ」じゃないけど、どんどん情報がメディアを通じて伝播していく。そうすると最終的に観光名所になってしまう。
「ヘリに乗って美味しいものを食べに行こう」
――絶対に来ないだろう人たちまでやってくるという。
荒木 遊び方を知らない人たちもやってくるわけ。そうすると、おのずとマナーも悪くなるから客足も遠のいて廃れていく。現実的な人たちが入ってくることで、バブルのディスコ文化は廃れてしまったところがあると思いますね。でも、流行って廃れるから流行なわけでしょ。
私、銀座で20年間バーラウンジをやっていたんですけど、バブルの影響によって銀座が不況になった時代、その終わりの頃にも、まだ「ヘリに乗って美味しいものを食べに行こう」みたいなことを言っているオジサンがいた。それでモテると思っているの? って正直驚いたけど、バブルの幻影にとり憑かれているんだなって。
盛者必衰の理をあらわすって言葉があるけど、バブルはまさにその理をあらわした現象だったと思いますね。
写真撮影=志水隆/文藝春秋
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