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「若い時期は外見が美しければ人生がうまくいくと思いがち」人生の後半戦を迎えた50歳前後の女性が追求すべき“心の美しさ”とは?

『女性の覚悟』より #1

2022/09/15
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 最近の大学や大学院は社会人を広く受け入れていますからチャレンジしてみましょう。世の中がどんどん変化していく中で、必要とされるスキルや知識もどんどん変化していきます。DX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、情報機器を使いこなせる能力は不可欠です。「今さら」「もう遅い」などといっていてはいけません。

「リスキリング」というのは仕事で必要なスキルを身につけることです。50代はリスキリングの適齢期です。これからの社会や職場で必要とされるスキルや知識を新たに身につけることです。実務・実社会で役に立つ知識やスキルです。昭和女子大学の社会人向け大学院にも60代の社会福祉法人の理事長さんが入学して学んでおられました。

写真はイメージです ©iStock.com

目の前の利益に飛びついてはいけない理由

 第三は損得を計算しすぎないことです。特に目の前の利益に飛びつかないことです。歳を重ねると少しぐらい損をしてもいい……くらいの心構えでいると、余裕が生まれ行動も美しくなります。バーゲンに殺到したり、無料サービスや割引に敏感すぎたり、貯蓄の細かい利率の計算に時間とエネルギーを費やす必要はありません。賢く立ち回ることばかり考えクヨクヨしていると、目つきやふるまいがいやしくなります。

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 割安の新しいものをたくさん買い使い捨てていくより、自分の好みの上質なものを少なく持って大事に手入れして使うほうがよほど好ましい生活態度だと私は思います。私はこれは個人の美学で他の人に押しつけてはいけないと思っていましたが、地球環境の点からも好ましいようです。

 私が自分のライフスタイルで反省しているのは若いときにいつも時間がなく「時間を有効に使わねば」という意識が強すぎたことです。子育てと仕事で忙しかったころは無駄な時間が苦痛でした。なかなか来ないエレベーターや赤信号にイライラし、列になって待つのに耐えられず、約束の時間に遅れてくる人に怒っていました。仕事と子育てに加え、自分の勉強や執筆で忙しく一秒の時間も無駄にできないと思っていましたが、ゆとりがなく美しくなかったなと反省するところ大です。

 お金に対してだけでなく、時間に対しても少し無駄を受け入れるゆとりを持っていなければならない、と思うこのごろです。限られた時間にあれもしなければこれもしなければと詰め込まず、空白の時間を少しつくる。具体的には発車間際の電車に飛び乗らない、エレベーターが来なければ待ち時間に深呼吸する、信号が黄色になったら急いで渡らず次を待つように、私なりにささやかな努力をしています。

 服装に関していえば、若いときはどんな流行のものを着ていても、安物を着ていてもいいですが、歳を重ねたら上質のきちんとしたものを身につけましょう。そして1年に1着ぐらいは新しいモノを買って気分をあげましょう。動きやすいけれど体の線がはっきり出るニットなどの服はやせている人でなければできるだけ避けたほうがよいと思います。私たちより上の世代は歳を重ねると和服が体の線を優しくカバーしてくれて素敵だったのですが、私たちの世代では着物を着こなせる人は少なくなっています。

 アフリカの民族衣装などを素敵に着こなしている成熟した女性もいますが、これはおしゃれの上級者で気合を入れないと無理ですね。大胆なアクセサリーは高価でもしまっておかず、できるだけ使うようにしましょう。

 また心がけたいのはできるだけ小さいお土産でも食べ物でも、優しい言葉でも人に与えることです。人に与えることができるのは大金持ちだけと考えたら大間違いです。例えば若いときに気に入って使っていたものでも現在は不要になったものは喜んで使ってくれる人にあげる。若いときに好きだったアクセサリー、お気に入りの道具などもできるだけ喜んでくださるときにさしあげる。相手が喜んでくれると自分も幸せになります。もちろん相手が気に入らないときに押しつけてはいけません。

 そして特別の思い出の品や特別に気に入っている品だけを手元に置いておけばすっきり暮らせます。これが美しい生活態度で内面の美につながります。

女性の覚悟

坂東眞理子

主婦の友社

2022年6月30日 発売

 

「若い時期は外見が美しければ人生がうまくいくと思いがち」人生の後半戦を迎えた50歳前後の女性が追求すべき“心の美しさ”とは?

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