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『鎌倉殿の13人』の八重は、実子ではなく養子の鶴丸を助けようと身を挺して川に入り命を落とす。その身を案じながら、小栗旬演じる夫の北条義時は仏像の顔を見て「妻の顔を思い出していた」とつぶやく。三谷幸喜もやはり、新垣結衣にそういう役を書くのだな、と思わずにはいられないシーンだ。

 吉永小百合や山口百恵の全盛期ではあるまいし、あまり女優に聖女だ菩薩だという役割を過剰に期待してはいけないのかもしれない。でも新垣結衣にはたぶんこれからも、『リーガル・ハイ』の黛真知子や、『鎌倉殿』の八重、『コード・ブルー』の白石恵のような、どこか倫理観とヒューマニズムを手放せない女性の役を演じてほしいという脚本家からの期待が絶えないだろう。

『ゴーストブック おばけずかん』の撮影後、内容をマスコミには明かさない手紙を4人の少年少女に一人ずつ書いて渡した、という逸話が語るように、脚本家や観客が新垣結衣に重ねてしまう「倫理」の重すぎる期待は、そうした素顔の彼女の人柄が引き寄せるものかもしれない。

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©文藝春秋

今の新垣結衣のボーカルが聴ける日はくるのか

 最後に、俳優活動とは別の視点になるが、新垣結衣には以前から歌手としての活動歴がある。出世作となった『恋空』の挿入歌である『heavenly days』などを含めいくつかのヒット曲もあったが、俳優活動の多忙につれフェイドアウトしたままだ。

  17歳当時の写真集「ちゅら・ちゅら」(集英社)

 当時の細く繊細な声に加え、いつか今の新垣結衣の深く落ち着いたボーカルが聴ける日を夢見るのも、可能性がない話ではないだろう。なにしろ今の彼女には、日本最高のソングライター、星野源がすぐ近くにいるのだから。『ゴーストブック おばけずかん』のエンディングに寄り添うように流れる主題歌『異世界混合大舞踏会 (feat. おばけ)』は、この映画のために書き下ろされた、星野源の新曲である。