「入所者の腕を殴ったり」目撃証言と「痛々しいアザ写真」
しかしながら家族らがこう強く主張するのには理由がある。家族らに対し、「『X』で虐待が横行している」と証言しているのは、元施設職員なのだ。昨年8月以降、「X」の元ケアマネジャーの女性が入所者の家族に複数のアザの写真を見せ、元職員の女性Yさん(30代)は自身が目撃したという“虐待”現場について家族に語ったという。
取材班はその写真を入手。そこには広範囲に紫に変色したアザ、黄色くなったアザ、ソフトボールくらいの大きさに腫れてみえるアザに、何か細いものがあたったのだろうか、真っ赤な一本線がひかれたような傷痕のようなものも写っている。
「この写真と、Yさんの話を聞いて、疑惑が確信に変わりました。『X』で私の母は虐待されていたんだと」(前出・Aさん)
腕を殴ったり、デコピンしたり…
元職員のYさんに話を聞くと、こう語った。
「こんなアザ、いくらアザのできやすい高齢者だからって暴行を受けないかぎりできませんよ。実際、私はある男性職員が2016年から私が辞めた今年1月まで、夜勤時のおむつ介助で、入所者の腕を殴ったりデコピンしたりするなどの虐待をしていたところを目撃していますから」
別の男性元職員Zさん(30代)もこう証言する。
「夜勤で先輩職員の補助に入ったときのことです。強い抵抗をする入所者のおむつを換える際に、目の前で先輩職員が入所者の腕をなぐっていました。私は特養での勤務は『X』が初めてで、このような介護をするのかととても驚きました。
ただ夜勤は2人体制で、30人以上の入所者のおむつを次々交換しなければいけない。抵抗されると業務に大きく障るので、こうするしかないのかなとも思いましたが……」
アザの写真に元施設職員の証言――。虐待を疑わせるこれらの“証拠”は、家族を不安に陥れるには十分だろう。しかしながら一方で、虐待があったと言い切れるだけの決定的証拠と言えないことも事実だ。
この2人が目撃した“虐待”が行われたとされるのは腕やおでこ。実際にその暴行によってできたアザは確認しておらず、胸や腹など写真に残っているアザに繋がる暴行は見たことがないという。