施設側に直撃「アザは虐待行為が原因ではない」
一方、「X」はこの騒動にどう対応しているのか。
取材を申し込むと、「やましいことがあればこうして取材には応じません」と副施設長の男性が分厚い資料を手に姿を現した。そしてまず、家族らの間に出回っているアザの写真についてこう釈明したのだ。
「職員には普段からどんなアザでも記録に残せと言ってきました。介護の現場にいると分かりますが、高齢者はアザができやすいんです。例えば注射痕や、ベッドから身を乗り出したときに柵に接触してできたアザもあります。なかには原因不明のアザもありますが、決して虐待行為が原因ではありません」
「元職員らはウソを吐いている」施設で内部紛糾
施設は、前出の元職員らが「虐待をしていた」と名指しした複数の職員や、虐待されたとされる入所者らにも聞き取りを行ったという。
「職員らはみんな『そのようなこと(虐待)は絶対にやっていない』と答えていますよ。被害に遭ったとされるBさんの父親にも生前、『叩いたりするもんおるか』と聞いたことがあります。認知症が進んではいましたが、『叩いたりするもんおらんなあ』と答えてらっしゃいました。Cさんの母親の件では、認知症が無く会話のできる同室の入所者に聞きましたが、虐待を見たという話はなかった。
施設としては、虐待はなかったと確信しています。虐待を目撃したという元職員らは、なんらかの理由でウソを吐いていると考えています」
しかし、Aさんの母親のケースでは、事故について施設の説明と医療機関からの開示情報に齟齬があることも事実だ。副施設長によると「単純な病院との連絡ミスが招いたのだろう」と言う。なぜそれがここまで尾を引いているのか。
「この騒動が起きる前まで、被害を訴えているご家族とのやりとりで問題が起きることはなかったんです。しかし、後に元職員らが内部情報である写真を持ち出してご家族に接触してから、態度がどんどん変わってしまった。こちらとしてはご家族にしっかり説明をしたいのですが、話し合いの場に元職員や共産党の方が大人数で来てしまう。冷静に話ができないんですよ。大きな騒動になってしまったがゆえに、いまに至ってもご家族の誤解を解けずにいるんです。元職員とその支援者に対しては、度を逸した行為もあるので、すでに刑事事件になっているものもありますが、厳しい対応をせざるをえません」
元職員や入所者家族と施設側、どちらの主張が正しいのか。動画や音声などの決定的な証拠がなく、職員や元職員の証言に拠っている現状では、虐待が「あった」とも「なかった」とも言い切れない。その上、施設側と入所者家族との信頼関係がここまで崩壊してしまっては、話し合いなどで解決することも困難だろう。