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とにかくひたすらに“ワイン押し”…中央本線“ブドウがいっぱいのナゾの駅”「塩尻」には何がある?

2022/08/29

genre : ニュース, 社会,

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 まずホームからしてワインである。なんとまあ、塩尻駅のホームの上にワインのためのブドウ棚。地元の人たちが管理している日本で唯一のホームの上のブドウ棚らしく、秋の収穫時期には地元の保育園の子どもたちが活躍するそうだ。日本で唯一、そりゃあまあ、そうでしょう。

 

 橋上駅舎のコンコースもどことなくワイナリー風のデザインになっていて、駅の外に出れば東西どちらの出入り口にもいちばん目に付く場所に巨大なワイン樽が置かれている。

 そしてとどめとでもいうべきか、駅前のベンチスペースもブドウ棚になっているのだ。日よけ代わりにブドウの木。もうこりゃあ言われなければ日本の山奥の塩尻などとは思わない。まるでフランス……というのはさすがに言い過ぎですが、とにかく徹底的なまでにワインを押しまくっているのだ。

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 それもそのはずで、塩尻の特産はワインなのだという。

ブドウやワインというと山梨が思い浮かぶが…

 ブドウやワインというと、国産ものでは山梨がいちばんに思い浮かぶ。中央本線にも「勝沼ぶどう郷」などという剛速球でブドウをアピールしている駅もあるくらいだ。もちろんブドウもワインも山梨県が生産量日本一。

 塩尻はその山梨と中央本線で直接結ばれているが、県境をしっかり跨いで長野県だ。

 だが、長野県だってまったく負けてはいないブドウの産地だ。ブドウの収穫量日本一は山梨県笛吹市で、それに次いで上位にはずらりと山梨県の町が入る。ところが、その中に混じって長野県の町の名も見えて、中野市・須坂市に続く県内第3位なのが塩尻市だ。

 

「農耕に向かない不毛の地」だったはずが…

 塩尻でブドウの生産がはじまったのはなんと明治時代にさかのぼる。それまで農耕には向かずに不毛の地とされていた塩尻駅西側、奈良井川沿いの桔梗ヶ原と呼ばれる一帯が開拓され、明治20年代以降にブドウ栽培がスタートしたのだという。

 植えてみたらブドウ栽培によく適した土地だったらしく(水が豊富に得られる扇状地、ということなのだろう)、ブドウ畑がどんどん広がり、ワインの製造もはじまった。それが今も続いていて、サントリーやメルシャンなどのワイン工場も立地するという、日本屈指のワイン生産地になったのだ。