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《祝・生誕15周年》初音ミクが激変させた日本の音楽シーン「音楽の中心地が『パリピとクラブ』から『ボカロPと自宅PC前』へ」「いまや10代が1人で人生を変えられる新世界」

《祝・生誕15周年》初音ミクが激変させた日本の音楽シーン「音楽の中心地が『パリピとクラブ』から『ボカロPと自宅PC前』へ」「いまや10代が1人で人生を変えられる新世界」

genre : エンタメ, 音楽

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 何か新しいことを始めたくて色々見ていたら、2006年12月にローンチされたばかりのニコニコ動画で替え歌やアニメやゲーム音楽の二次創作が流行っていたんですね。レコード会社の人とジャンルは何でもいいからニコ動で新人を探してみようということになって、そこで紹介されたのがlivetuneの「Packaged」でした。「Re:Package」の表題曲ですね。

「Re:Package」の表題曲となったlivetuneの「Packaged」(ニコニコ動画より)

「Packaged」を聞いた瞬間にビビッときた

――それまでボーカロイド自体にもまったく触れていなかったんですか?

田村 いえいえ、「MEIKO」は使っていました。

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――2004年に発売された日本初のボーカロイド製品ですね。

田村 使っていたといっても、それで曲を作って発表するというよりは、仮歌に使っていた程度ですけどね。

 だからボーカロイドを使って曲を作るという発想はなくて、「ボーカロイドで作った曲がいいんだよ」と勧められた時点ではピンと来ませんでした。でも、「Packaged」を聞いた瞬間にビビッときたんです。この曲、結構ダンスミュージック調じゃないか、って。

©文藝春秋 撮影=平松市聖

 作曲したlivetuneのkzくんは当時音大の3年生で、しかもシンセサイザーを専門に学んでいた。音感とかもすごいし、かなりクオリティ高いなと思ったんですよね。こんなにすごいクリエイターがボーカロイド界隈にいるんだ、と驚いた記憶があります。

「supercell」はこれまで出たCDの中で一番売れた

――その後、2008年、田村さんがプロデュースした「Re:Package」がオリコンウイークリーチャート5位、累計10万枚以上を売り上げました。ですが初音ミクは、まだまだ世間では知られた存在ではありませんでした。いつ頃、風向きが変わったなと感じましたか?

田村 いくつかありますが、最初は2009年ですね。ryo率いるsupercellが、初のアルバム『supercell』を出したんです。2007年末に発表してから1年で330万回以上再生された「メルト」をはじめ、人気曲を取り揃えて、満を持して出したアルバムでした。

 そしたらソニーミュージックの方々がすごく頑張ってプロモーションしてくれて、その甲斐あって情報解禁から発売までAmazonのランキングがずっと1位だった。おそらくこれまで出た初音ミクのCDの中で一番売れたんじゃないかな。そのときはちょっと社会現象だなっていう感じがしましたね。