今年8月31日に“誕生”から15周年を迎える「初音ミク」。当時、音声合成システム「VOCALOID(ボーカロイド)」によるボーカル音源を使用した楽曲がニコニコ動画に投稿されると、そのキャラクター性も相まってインターネット上で話題を呼んだ。

 当初は “サブカルチャー”の域を出なかった初音ミクだが、その名前は徐々に世間にも広がり始める。2011年にGoogleのCMで起用されると、2013年には地上波音楽番組に出演。2018年末のNHK紅白歌合戦ではオープニング映像に登場した。

 ブームの火付け役となったのは、初音ミクを始めとしたボーカロイドを使ったオリジナル楽曲=ボカロ曲を制作する「ボカロP」たちだ。“P”はプロデューサーの略で、彼らはその名の通り、思い思いのテーマやジャンルでプロデュースしたボカロ曲を世に送り出している。

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 その勢いは留まることを知らない。実は、米津玄師やYOASOBIら邦楽のヒットチャートを席巻しているアーティストは「ボカロP」出身。“初音ミクの遺伝子”が、現代のミュージックシーンを牽引しているのだ。

 初音ミクはどのようにしてブレイクし、日本の音楽シーンを語る上で欠かせない存在となっていったのか。

 初音ミクのメジャー作品のひとつ「Re:Package/livetune feat. 初音ミク」(以下、「Re:Package」)を手掛け、現在も多数のボカロP出身アーティストたちをマネージメントする株式会社インクストゥエンター代表取締役・田村優氏に話を聞いた。

田村優氏 ©文藝春秋 撮影=平松市聖

何でもいいからニコ動で新人を探してみることになり…

――初音ミクとの出会いはどんなものだったんですか? まだ全然メジャーな存在ではない時代ですよね。

田村 楽曲を通じての出会いでした。それまではDTMでトランスっていうジャンルのダンスミュージックを作っていて、そのコンピレーションCDが結構売れたりしていたんです。それで大学3年生の時に今の会社を立ち上げたのですが、2003年頃から次第にダンスミュージックが売れなくなってきて、これはまずいぞ、と。