「スマホで録音」10代でも成功できる世界
――初音ミク誕生15周年で、ますますボカロシーンが盛り上がっていると。
田村 むしろ今が佳境、再ブレイクしていると感じています。一昨年の年末からニコニコ動画で「ボカコレ」というイベントが始まったんです。ボカロPとかクリエイターが一斉に作品を投稿してランキングを競うイベントなんですけど、今年の春に開催されたときには4000本以上の動画が投稿されていました。
――そんなに誰にでも作れるものなんですか。
田村 かなり手軽ですよ。パソコン1台にソフトシンセとかも入って5万、10万でできますし、何ならスマホで録音して投稿もできる。カジュアルにボカロPになれて、当たれば10代でも成功できる世界ですから、夢しかないですよね。キャラクターが広まって聞く人が増えて、技術の発展で作る人も増えた。その好循環が15年間ずっと根強い人気と、現在の盛り上がりを生んでいるのだと思います。
今後の音楽はテクノロジーの進化を共鳴していく
――今後、初音ミクやボーカロイドシーンはどう展開していくと思いますか。
田村 最近よく目にするメタバースとかWeb3とか、この先の世界のスタンダードになっていくものとボーカロイドやインターネットミュージックって、かなりマッチしていると思うんですよね。だからもっともっと進化していくのかなと。AIの音声合成技術とかも進んできているので、初音ミクの声が、今僕らの話しているような声になる日も近いかもしれません。
――ボカロはますます進化していくと。
田村 ただ正直、僕も初音ミクがメジャーデビューしたときはもちろん、ここまで流行るとは思っていなかったんです。ブームって5年から10年で終わっちゃうのが普通。僕の場合はダンスミュージックのトレンドが終わってボカロに出会ったときにそれを感じましたが、「ここにきて次の展開があったとは」という出来事が必ずやってくる。
でもここからは音楽業界が経験したことのない15年間が始まるんです。これまでの流行の変化は演歌やフォーク、ポップス、ダンスミュージックなど音楽ジャンルの変遷でしたが、今後の音楽はテクノロジーの進化と共鳴していく。
次にやってくる「ここにきて次の展開があったとは」の衝撃は、これまでにないほど大きくなると思います。