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「教育のこと、妻に任せてみるか…」子育て観の違いに思い悩んだ“昭和型価値観”の夫が肩の荷を下ろした“意外なきっかけ”

『妻が怖くて仕方ない』より #2

2022/09/18
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 僕がこの域に到達するには、もっともっと時間と経験が必要だ。今は、現実的な対処法、思考法を学びたい。

 今度は、石田さんがママカフェから垣間見る夫婦問題について聞いてみる。

夫婦のコミュニケーション問題

「子どもの問題を相談に来るママの3人にひとりが、夫婦の問題をバックグラウンドに持っていますね」

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 石田さんは、普段は子どもにフォーカスしたいため、夫婦関係には立ち入らない。しかし、ママの言葉の端々から、子育て・教育面では主導権を握っても、日常生活ではパパが威張っている様子がうかがえるケースもある。

 とある家庭の夕食時。テレビを見ていた夫が、妻にこう言う。

「お前、早く料理を作れよ。時間だろう」

 妻は「ごめんね」と言いながら台所に向かうが、内心は「こんちくしょう」かもしれない。この夫婦が子どもにスマホを持たせるか否かで、大喧嘩する。きっかけはスマホ問題だが、背景に夫婦のコミュニケーション問題があるのは明らかだ。

「夫婦で認め合え、日々、話ができて信頼関係がある。だとすれば、教育方針でぶつかったとしても、そこまで荒れません。普段、どちらかが我慢する状況にあるから、ドンと衝突するのです」

©iStock.com

マルチタスク型vsシングルタスク型

 この分析には、思い当たる節がある。テレビ台でもめた伏線には、その前年に起きた借金問題からのぎくしゃくがあった。それに、コロナ禍での在宅ストレスが重なっている。妻は僕との生活に息苦しさを感じている。それが、教育問題で爆発する。

 それにしても、どうして夫婦はこんなにも相容れないものなのか。石田さんは、そんな存在だからこそ惹かれ合って、結婚したと答える。

「そもそも夫婦は、自分と異なるタイプの人と結婚している可能性が高い。自分にないものをあこがれとして持つから。磁石はN極とS極がくっつきます」

「ところが結婚してからは、同質を求めてしまう。本来は、物事に気づくタイプと気づかないタイプの組み合わせでバランスが取れているはずなのに。『何で、あんたは何も気づかないの?』と相手にいら立つ。これではトラブルが起きます」

 石田さんによれば、行動・価値基準の違いを元にした二つの分類があるという。一つ目は、「マルチタスク型」。比較的なんでも満遍なくこなせる人で、一点への集中でなく分散タイプ。行動・価値基準は「損得」に置く。無駄が嫌いで効率化を求めるため、方法論、やり方、ノウハウ、スケジュール管理を好む。