育児を妻に任せきりにせず、自身も積極的に育児に関わろうとする姿勢を持つ夫が「イクメン」と呼ばれるようになって久しい。そうした流れを後押しするかのように、2012年には育児・介護休業法が改正され、男性が育児休暇を取得しやすい制度が生まれた。厚労省発の「イクメンプロジェクト」の発足も同年のことだ。

 しかし、いまだ男性の育児休暇取得率は12.65%(令和2年度雇用均等基本調査)に留まっているという現実もある。はたして、その原因は何なのだろうか。ここでは、教育心理学者の榎本博明氏の著書『イクメンの罠』(新潮新書)の一部を抜粋。イクメンブームの実態について紹介する。(全2回の1回目/後編を読む)

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男性育休取得率はわずか数%

 2012年には、父親の育児休業取得率の向上などを目的とした改正育児・介護休業法が全面施行された。これによって取得率は徐々に上昇するようになるとはいえ、1~2%台でしかなかった。初めて3%を超えたのが2016年であった。ちなみに育休は、子どもが原則1歳になるまで男女とも取得することができる。

 だが、「イクメンプロジェクト」始動から10年経った2020年を見ると、取得率は伸びているものの全体の1割を少し超える程度に過ぎないのが現状で、女性の取得率(81.6%)とは大きな開きがあるままだ。そもそも、このデータでは1日でも育休を取れば「取得者」になってしまう。また育休を取るには社内申請などの手続きが要るため、たまった有休を消化することで「育休」にあてた父親たちもいただろう。

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育休の特例措置として男性版産休が新設

 このままでは同プロジェクトサイトが掲げる「2025年までに30%」という目標を達成しそうにもない。そこで、「義務化」を厚労省が持ち出したのだろうか。

 企業が従業員に育休の制度説明を行い、個別に取得の意向を確認するという「義務化」は2022年から開始するといい、有期契約の非正規労働者は雇用期間が1年以上なければ育休を取得できないなどの要件もなくなるという。