父親の関与による母親のストレス軽減効果
ここまで疑問点を指摘してきたが、もちろん父親が育児をすることの利点は大いにある。その科学的根拠については、前述の「プロジェクト」サイトには記載がないので、心理学の見地からその効用を示すことにしたい。
父親の役割の重要性が認識されるようになるのに大きく貢献したのは、アメリカの心理学者マイケル・E・ラムの「父親:子どもの発達に対する忘れられた貢献者」(1975年)という論文だった。そのラムたちの著書が日本でも『父親の役割──乳幼児発達とのかかわり』(家政教育社)として1981年に翻訳出版されている。
それに触発されて、日本でも子育てにおける父親の役割や影響力に関する調査研究が次々に行われるようになった。そこで分かってきたのは、父親が子育てに参加するほど母親の子育て不安が少なくなることだ。父親が子育てにまったく関与せず、すべて一人で抱え込まなければならない母親の方がストレスが高く、子育て不安が強いのは、考えてみれば当たり前のことである。
父親が母親を精神的に支えることの大切さ
また、父親が子どもとの交流をもつことで母親の自己閉塞感が軽減することや、父親の子育て参加が少ないほど母親の子どもに対する加虐的態度が出現しやすいことが報告されている。
このように、父親の子育て参加は、母親のストレス軽減を通して、子どもに対して好影響を与えることが明らかになっている。
さらには、夫婦間のコミュニケーションがあるほど母親のストレスが低いなど、父親が母親を精神的に支えることの大切さが指摘されている。父親の子育て参加だけでなく、子育てという意義深い重労働に対する父親の理解は、母親のストレスや子育て不安の軽減に大いに役立っているのである。
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