一般社団法人教育デザインラボ代表理事で子育て・教育に関する情報を発信する石田勝紀氏によると、夫婦でぶつかるテーマは「(1)習い事をたくさんやらせるか、やらせないか」「(2)小学校受験や中学校受験をさせるか、させないか」「(3)ゲームやスマホを持たせるか、持たせないか」「(4)小さいときは幅広い経験が必要だと思っているか、まずは勉強が大事と思っているか」に大別されるという。そして、これらのぶつかり合いは、夫婦間のバランスが取れている証拠で、とても良いことであるそうだ。
しかし、いざ自身がパートナーとの価値観のズレに悩んでいる場合、子育てを楽観することは難しいだろう。ジャーナリストの富岡悠希氏も、妻との子育て観の違いに悩んだ一人。同氏は著書『妻が怖くて仕方ない』(ポプラ新書)のなかで、石田氏に自身の悩みを相談した。ここでは同書の一部を抜粋し、当時のもようを紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)
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パパの道、ママの道に次ぐ、第三の道
先述のように、石田さんはこうした夫婦間のギャップを「むしろ幸運」と捉える。苦労している僕は折々、「同じ考えの妻だと楽なのに」とへこむ。しかし、違いは「子どもの選択肢にオプションを持たせることにつながる」と石田さんは力説する。
仮に夫婦共、都会育ち、中高一貫校の卒業生だったとする。すると、先の2「中学校受験をさせるか、させないか」では、「させる」一択となろう。ところが、地元の公立中に進学させたほうが、子どもが伸び伸びできる場合もある。
この時、夫は都会育ち、中高一貫校の卒業生、妻は地方育ち、中高共に地元の公立のカップルだとどうか。公立中への進学を検討する割合は高まりそうだ。
「夫婦の教育方針が違うことは、多様なものの見方ができる環境にあるということです。それを生かすためには、夫婦共に精神的に大人になること。お互いの価値観を認め合う。そして、パパの道、ママの道に次ぐ、第三の道を見つければいい」
「夫婦は修行、人間レベルを高めるための行」
もし、第三の道が無理ならば、夫と妻がそれぞれ提唱するプランを、一定期間試す。夫プラン、妻プランを2週間ずつ実施。その後、子どもにどちらがよかったか聞く。両方共ダメならば、再度、第三の道を探る。
石田さんのアイデアを聞く間、僕は「なかなかに骨が折れる過程だな」と感じていた。すると考えが顔に出たのか、石田さんが言葉を続けた。
「夫婦は修行。人間レベルを高めるための『行』なのですよ。ハハハ」