2016年1月から2017年5月に文化放送でオンエアされたラジオ「いとうせいこう×みうらじゅん ザツダン!」。大好評だったこの放送の中からとくに面白かった雑談を厳選し、新幹線で隠しどりした “本気雑談”を加えて書籍化した『雑談藝』が発売になりました。カバー撮影のために文藝春秋にやってきた「おしゃべりエンターテイナー」の2人に、「この本について雑談してください」とお願いしたところ、黒ひげ、ウォーリー、達磨と、話はあっちこっちに転がりまくって……。「笑って読むだけで雑談力が身につく」と噂の名人芸をご堪能ください!
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新幹線でつい周りを意識してしゃべる
いとう 『雑談藝』ってタイトルはみうらさんがつけたんでしょ。
みうら うん。ちなみに「藝」は文藝春秋の「藝」だよ。
いとう 難しいほうの「藝」ね。中に「死」って字、入ってない?
みうら それは「葬式」の「葬」じゃない(笑)?
いとう 『雑談葬』になっちゃった(笑)。
みうら 「葬」の字は、死んだ人の上に草をかぶせるから、草冠なんでしょ。
いとう なるほどー。象形文字だ。
みうら でも、「死」の下のイカの足みたいなやつが、昔からよくわからない。
いとう わからないね。
みうら でもさ、俺らの雑談は「藝」でしょ。だっていつも第三者に聞かれてるつもりでしゃべってるんだもん。
いとう 自意識過剰という意味ではなくて、人を笑わすつもりで雑談してるよね。いや、本当は相手を一番笑わせようとしてるけど。
みうら この間、いとうさんと一緒に北陸新幹線に乗ったときも、つい、周りに聞かせる体(テイ)でしゃべってたもんね。
いとう 乗客が好きそうな話題を選んで話をしたほうが、ちょいと聞こえたときに気分がいいじゃないですか。
みうら 北陸新幹線の帰りは、すぐ後ろに政治家の人もいて、俺らの話が筒抜けだったよ。
いとう あれ全部聞かれてたの?
みうら この雑談が聞きたいがために、わざと俺らの後ろの席の券を取ったんじゃないの?
いとう JRの窓口で「雑談券ありませんか?」と。まあ、100円増しくらいだろうね。そうじゃなくて、ラジオのときは「ザツダン!」ってタイトルだったけど、それを本にするとき『雑談藝』に変えたんだね?
みうら 漢字3文字だと、表札にしてもいいくらいじゃないかと思って。
俺たちの雑談でM-1を勝ち抜けるのか?
いとう なんで「藝」をつけたの?
みうら ……文藝春秋から出してるからだよね。お気に入りじゃ……ない? 何か変な感じする?
いとう いやいや、変じゃないよ。
みうら 『漫才藝』じゃないしね。漫才はもっとかっちりしてるじゃないですか。
いとう 起承転結があるでしょ。
みうら 漫才師の人はアドリブのように見せつつ、ちゃんと台本覚えてやってるんだよね。よく公園で若いお笑いの人が壁に向って練習してるけど、あれやったことないし。
いとう ないない。
みうら お笑いの人はステージ出る前にネタ合わせしたりもするでしょ。
いとう M-1のCM前に映るやつでしょ。
みうら 楽屋の大部屋の端々で壁に向ってるやつがいるじゃん。
いとう コントのときは衣装を見せないようにマントを羽織ってやるケースもあるね。
みうら 俺らまったくやらないじゃん。
いとう この何にも用意しない状態で、M-1を勝ち抜けるのか? ってことを俺はやりたい。完全即興だよ。
みうら え? 何歳だと思ってるのよ(笑)?
いとう テンションは上がると思うよ。あの音楽が鳴って、走って出ないといけないんだよ。あの登場ができるかどうかが、唯一の心配。
みうら 階段を駆け下りて登場するとき、つんのめらないかと思って怖い。
いとう でもゆっくり出るのもいやらしいじゃん。ポーンと出ればいいのかな。
みうら ああ、「プロミス」のコマーシャルみたいなやつか。でも、飛び出したのはいいけど、あまりにも2人の距離が離れてしまった場合、困らない?
いとう 「黒ひげ危機一発ゲーム」の黒ひげみたいに、どこ飛んでいくかわからないよ。