米坂線はモロに当てはまる。JR東日本が発表した2021年度の輸送密度によると、米沢-坂町間の全線で290人。JR東日本の在来線66線のうち61位と低迷していた。三つの区間に分けると米沢-今泉間は621人、今泉-小国間は226人、小国-坂町間は124人。運休になった区間ほど厳しい。
住民からは悲観的な声が漏れる。
復旧に向けて活動を強めていくが…
「これまでJRは赤字路線が被災しても復旧工事を行わず、廃線にするなどしてきました。米坂線もそうなるでしょう。国の有識者会議が提言を出した直後だから、なおさらです。私は東京出張で使うので、重宝してきたのですが」と50代の男性は残念がる。
当のJR東日本は方針を明らかにしていない。沿線市町村などで構成する「米坂線整備促進期成同盟会」は、復旧に向けて活動を強めていく方針だ。
期成同盟会の事務局は小国町役場に置かれている。担当職員の舟山大地さんは「くしくも国の有識者会議の提言が出る直前に総会を開き、今年度の活動方針を決めました。人気のフォトコンテストは例年通りに行う予定でした。インスタグラムで『いいね』を獲得した上位5作品を選ぶなどしてきたので、比較的に若者向けの事業です。高齢の方がもっと参加できないかと、今年は新たに俳句や川柳のコンテストを始める計画でした。沿線のイベントに合わせて旅行社が催す日帰り旅への補助は、コロナ禍で中断していたのですが、今年は復活させようと考えてました。期成同盟会のホームページの魅力アップにも取り組み、8月から毎月、構成市町村の持ち回りで米坂線の紹介や観光PRをしていこうと話し合っていました」と説明する。
被災でそのまま進められなくなってしまったものの、「形を変えるなど工夫して、少しでも前向きに取り組んでいきます」と意気込む。
「自分には関係ありません」
地元住民はどう考えているのだろう。「あまりにも本数が少なくて、使おうにも使えない路線でした。だから運転できる間は自家用車を使います。運転できなくなったら娘や息子に乗せてもらう。列車がなくなっても、自分には関係ありません」と話す人がかなりいた。
だが、観光関係者の一人は「お盆の帰省には多くの人が使うので、今年はかなり影響が出ました。都市部から列車を利用して訪れる観光客もいます。沿線では高校生だけでなく、通院で使っている人もいます。人数は少ないかもしれませんが、それぞれ切実な利用者です。もし自分がその立場に置かれたらと、都市部の人にも『自分ごと』として考えてもらいたい」と訴える。
横山係長は「災害で危機に直面し、改めて重要な路線だったと実感しました。被災したのは残念ですが、逆に米坂線を盛り上げ、応援してもらえるようにするきっかけにできたらと思います」と話していた。
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