砕石が流出して宙づりになったレール
山形県米沢市と新潟県村上市を結ぶJR米坂線(米沢-坂町、90.7km)。8月3日~4日の豪雨で被災し、全線の4分の3に当たる今泉-坂町間(67.7km)が不通になっている。
同区間は、国の有識者会議がバス転換などを含めた廃止を議論するよう提言した輸送密度(1km当たりの1日平均旅客人数)が1000人未満の線区だ。このため地元では被災直後から「もう復旧工事さえされずに廃線になるのではないか」という諦めの声が上がった。
災害で疲弊した沿線を、さらに暗くするような喪失感が漂う。
地元はどう考え、どう動くのか。山形県内(#1)に続いて、新潟県内の状況を伝えたい。
「これ、酷いでしょう」
新潟県関川村役場の職員、鈴木恭さんがため息をつく。役場から歩いて3分ほどの駐車場裏。JR米坂線の線路は、砕石が流出してレールが宙づりになっていた。そこだけかと思うと、すぐ近くにも宙吊りになりかけた場所がある。
真下には水路とは言えないほど小さな流れがあった。これが、あの日の豪雨で激流となり、路盤を壊してしまったのだろうか。
関川村の雨量はそれほど凄かった。
24時間累積雨量は560mm!
国交省の計測で、8月4日午前2時までの1時間に161mmを記録したのである。気象庁の観測で1時間の雨量が最も多かったのは千葉県香取市(1999年10月27日)と長崎市長浦岳(1982年7月23日)の153mmだ。これらを上回る降雨だったことになる。
24時間の累積雨量も気象庁の観測では8月4日午前6時20分までに560.0mmとなった。同村のこれまでの24時間雨量は、2014年7月10日の212.0mmが最高だったので、2.5倍以上の雨が降った。
これだけ降ったのだから、ただで済むはずがなかった。村内では多くの地区が被災して大混乱に陥った。
鈴木さんは交通政策を担当する地域政策課に所属している。沿線市町村などと結成した「米坂線整備促進期成同盟会」の担当も兼任していて、鉄路についての被害情報が集まるポストだ。にもかかわらず、「この場所の被害については、昨日初めて知りました」と話す。8月下旬のことだ。
普通なら大きく報道されるレベルの損壊だろう。しかも、村中心部の線路である。ところが、発災から約4週間が経過して、ようやく被災情報が届いたのだ。
2.5km以上に渡って土砂に埋まった線路
それというのも、延長2.5km以上にわたって線路が土砂崩れに埋まるなどした箇所があり、線路が一部宙吊りになった程度では被害が小さかったのである。
それぐらい鉄路の被災は酷かった。
米坂線は新潟・山形の2県をまたぐ鉄道だ。新潟側の拠点は日本海に近い坂町駅(村上市)である。羽越本線の特急停車駅でもあり、新潟などへ向かうにはここで乗り換える。