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 また、山形県側の山間部ではJRしか公共交通機関がない地区もあり、仮に廃止になったとして、代わりに民間バスが路線を延伸してくれるかどうかも不明だ。

「米坂線が地域の下支えをしてくれていたのだと痛感しました」

 関川村役場の大島祐治・地域政策課長は「こうした事態になって、米坂線が地域の下支えをしてくれていたのだと痛感しました。決してないがしろにしてきたわけではありません。大事な路線だと考えてきたつもりですが、改めて気づかされたのです。だからこそ、運行再開後はもっと米坂線を活用できるよう、知恵を絞っていきたい」と話す。

「JRの社員も、鉄道が好きで入った人が多いでしょうから、廃止じゃなくて利用拡大にアイデアを出したいのではないでしょうか。そうした社員に加わってもらい、ワクワクするような案を考えたいと思います」と前向きだ。

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関川村の中心部にある越後下関駅。無人駅の扱いだが、村が委託したJR社員OBが詰めている。列車の運行がなくなりひっそりとしていた(関川村)

 何が仕掛けられるか。それには米坂線はどんな路線なのか、関川村とはどんなところなのか、再認識して戦略を立てる必要があるだろう。

 被災直後ということもあって、まだ突き詰めて考えられているわけではない。

 ただ、大島課長は「関川村の魅力は、人の良さ。世話好きの多さ。自然も人間も、何となくいいところ」と話す。鈴木さんも「すごくいいというわけではなく、何となくいい村です。そうしたところに、ふらっと来ることができる鉄道は、非常に重要なインフラだと思います」と続ける。

ゆっくりと走る鉄道がもつ癒しの側面

 清流で知られる荒川はアユ釣りなどで有名だ。温泉は5箇所もある。

 民芸品「猫ちぐら」の里としても知られる。農作業をしながら子供があやせるよう、藁(わら)で編んだ揺りかごがルーツで、猫の寝床としても作られるようになったのだ。高齢者のグループが制作している。

藁で「猫ちぐら」を作る高齢者(関川村)

 関川村は「何となくいいところ」であると同時に、ほっとするようなところでもあるのだろう。そうした地区をゆっくりと走る鉄道。

 関川村にとっての米坂線は、高校に通える村であり続けるための維持装置であると同時に、癒しの鉄道というような側面があるのかもしれない。

 大島課長が言う。「JRも民間事業者だから、コストの議論はよく分かります。ただ一方で、地域の交通網をどう捉えていくかという課題もあります。国はどう考えているのでしょう。これまで都市交通では議論されてきたのでしょうが、地方交通についてはあまりにも関心が払われてこなかったような気がします。

 日本にはいろんな地区があります。関川村だけが特別ではありません、でも、ほっとするような空間がどんどん失われていくのは寂しい気がします。そうしたことも含めて、これからの地方交通の姿を模索していきたいと思います」。

 これにはまず、村の復旧や復興に取り組まなければならないが、その延長線上でどう交通網を再生・構築していけるだろうか。議論の行く末を見守りたい。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。