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「何度も発狂しそうになりましたね」

――バブル崩壊後の90年代に「出版バブル時代」が到来します。

柴田 90年代って、少年漫画は『SLAM DUNK』や『幽☆遊☆白書』、少女漫画なら『美少女戦士セーラームーン』とか、ヒット作が連発でしょう。当時のジャンプが600万部の時代ですから。

 私もあっという間に連載が増えて、パプワくんの2話目を描いた後に、会社を辞めました。あの頃、キツかったのは『自由人HERO』を連載していた「月刊ジャンプ」のネーム直し。何度、編集をぶん殴りたいと思ったことか(笑)。とはいえ、アシスタント経験もない自分に漫画のイロハを叩き込んでくれたわけですから、集英社には足を向けて寝られません。

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デビュー作『南国少年パプワくん』は600万部を超える大ヒット(画像:柴田亜美公式Twitterより)

――慣れない漫画家生活はどうでしたか?

柴田 デビュー当時はアシスタントさんもいなかったから、1人で高円寺のアパートにこもりっきり。ものすごい孤独感で、精神的に追い詰められるし、やっぱりちょっとおかしくなりました。何度も発狂しそうになりましたね。ギリギリの生活のなかでも、お酒だけは飲みに行っていましたが(笑)。

――食事はどうしていましたか?

柴田 出来合いのものを買ったり、近所のデリバリーを頼んだり。あるいは、食べない。あまりの忙しさで食べる余裕がないときも多くて……。そういうときは栄養ドリンクを浴びるように飲んで、最終的には男性向けの強壮ドリンクにも手を出していましたね。

――じゃあ、キッチンはきれいなまま……。

 

柴田 「流しで金魚飼えるわ!」ってくらい、ピカピカでしたよ(笑)。

――ちなみに冷蔵庫には何が?

柴田 各メーカーのいろいろな種類の栄養ドリンクがぎっしり。目隠しでも味がわかるぐらい栄養ドリンクには詳しくなりました。

 ところが、ある日、医者をやっていた父が冷蔵庫の中を見て、「これは興奮剤だから絶対に飲んだらダメだ!」とかなんとか言って、全部捨てられたんです。

 その後、どうするのかと思ったら「俺の大学病院で使っているやつを飲め」と、プロ仕様の栄養ドリンクが大量に送られてきましたね(笑)。