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宗教2世に生まれて

 金銭的な支配による困窮について言えば、家族以外から被害を受けている場合ももちろんある。「旧統一教会」の件があってようやく明るみに出てきた、宗教団体による搾取行為もその一つだ。ある宗教2世の方に話を聞くと、その悪質な手口が浮かび上がってくる。

「親元を離れてどこに引っ越しても、必ず信者の人たちが家まで押しかけてくるんです。『私は信者じゃないので』と何度訪問をやめるようにお願いしても『ご挨拶ですから』と言って、不在時には『また来ます』と書かれた手紙をポストに入れられてしまうので、自分の妻や子どもにも迷惑がかかっている状態で……」

 そう話す男性は、その宗教団体の信者である母親に「困っているので団体に住所を教えないでくれ」と何度も強く訴えたが、母親はその場しのぎで生返事をするばかり。団体側に指示されるまま抗えず、家族の住所や連絡先を書いてしまうのだという。

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 母親は、この男性が子どもの頃から宗教団体の信者であり、男性は団体の会合や講演会があるたびに連れ出され、中学に上がってからは団体側から正式に入信するようにとしつこく勧誘されるようになった。「寄付」という名目で母親が大金を支払っていることを知っていた男性は、当時から母親に強く抗議し、自分が宗教団体に入信することを強く拒否したため、母親との関係はしだいに悪化していった。

 しかし、父親が幼少期に他界していた男性にとって、母親は唯一の肉親であった。困窮した生活を立て直してやりたいという思いから、実家を離れてからも仕送りだけは一度も欠かしたことがなかった。若くして伴侶を亡くした母親にとって、長らく宗教は心の糧になっていたのかもしれないと、大人になって初めて母親が抱えていた孤独を想像し、女手ひとつで自分を育て上げてくれたことを感謝できるようになった。

「生まれを呪うようになったのは、結婚しようと思った女性の両親から、私が宗教2世であることを理由に結婚を認めてもらえなかったのがきっかけです。私は信者ではないのに、ただ母親がその宗教団体の信者だから、という理由で、私と彼女は結婚を許してもらえなかったのです。母親を恨むわけではありませんが、明確に『差別を受けた』と実感して、やり場のない怒りを感じました」