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ある宗教2世の告白「結婚を認めてもらえなかった」「母親との縁を切りたい…」

2022/09/06

genre : ライフ, 社会

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金がなければ解決ができない

 家庭が経済的に困窮している場合や、虐待を受けている場合、いくら逃げたいと思っても、経済的に自立していない子どもは物理的に親と距離を置くこともできず、報復を恐れて外部に助けを求めることもできない。

 たとえ助けを求めることができたとしても、多くの場合、警察や行政から「家庭の問題は家族同士で話し合ってください」と門前払いをされるだけで、根本的な問題解決に至らない。逃げるにしても新しい住居を確保する経済的余裕がなくては不可能であるし、困窮している大元の原因を断ったり収入を増やすためにも、準備にかかる時間とその間を食いつなぐための費用が必要であるから、結局のところ金がなければ、深刻な問題は解決できないことの方が圧倒的に多いのだ。

 実際に貧困家庭に育ち、子どもの頃から家で暴力を受け続けていた私自身、地獄のような環境から逃げたいと思っていても10年以上どうすることもできず、誰も助けてくれないので、現実的に考えられる選択肢は「自殺する」か「加害者を殺す」かのどちらかしかなかった。私の場合は幸運にも、途中で第三者の介入があったために実家から逃げて自力で生活ができるようになったが、今でも後遺症があり、激しいフラッシュバックに毎日苦しめられている。あのとき外部の人間が介入してくれなければ、私はもうここにいなかっただろうと思う。

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「貧困」や「家族間のトラブル」とひとことに言っても、実情は単純明快なものでは決してなく、非常に複雑でセンシティブな性質上、当事者が被害を隠そうとすることもあるため、解決が難しい問題なのだ。また、血縁者間の問題はまだまだ社会的には「家族でどうにかするもの」という風潮が強く、家庭で暴力が行われていても「被害者」と「加害者」として扱われにくいことは人権が軽んじられている状態だと言うべきであり、深刻な課題である。