「今、DJ(故金大中大統領)だったら? 2002年サッカーワールドカップ戦の際、洪明甫主将は『ベスト16に進出します。後輩たちの兵役免除をお願いします』と、文化体育観光相だった私に話しました。DJは兵務行政の苦衷にもかかわらず許可し、チームはベスト4へと進んだ。あの時は世論調査をやった記憶はありません。どうして兵務行政まで迷うのでしょうかねえ。私はBTSの兵役免除を歓迎しますよ」(2022年9月3日)

 自身のFacebookにこうしれっと書き込んだのは前政権で国家情報院院長だった朴智元氏だ。再び韓国国会でBTSの兵役問題が浮上し、現政権が対応にあたふたしていることを指したコメントだった。

©AFLO

メンバーは兵役に就く立場を表明するも、白黒つけられない政府

 これまで何度も取り上げられてきたBTSの兵役問題。大衆文化芸術者としてBTSメンバーが代替服務を受けられるようにする法改正案は昨年6月から発議され、3件が審議中とされるが、結論が出ないまま持ち越されてきた。

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 メンバー最年長のジンは今年12月には入隊期限の30歳を迎える。法改正のデッドラインは今年の6月末といわれたが、5月には新政権がスタートし、何も動かないまま、その期限もとっくに過ぎた。BTSはその前の6月14日、「グループでの活動を暫定的に休止する」と発表している。

 韓国紙の芸能担当記者が言う。

「この4月には所属事務所のHYBEがBTSの兵役について触れ、BTSが兵役に就く立場には変わりがないとしながらも、国会へ向けて『兵役の論議を今国会で整理してほしい』というコメントを出しました。これはスケジュールが組めないという現実的問題から政府に回答を求めたもの。

 そもそもメンバーは兵役については、『国に呼ばれればいつでも入隊する』というスタンスを明確にしており、現在は個別での活動も始まっています。当事者は覚悟しているだろうに、白黒つけられない政府が揺さぶっている格好です」

最年長のJIN ©getty

 BTSの兵役に特例を与える可能性として残っているのが、兵役法の施行令を改正し、兵役特例の対象枠を広げることだという。そのため、国会でもさっそく取り上げられ、BTSの兵役特例へ難色を示している李鍾燮国防相へ質問が飛んだ。

 李国防相は8月初めには、姿勢を軟化させ、「BTSが入隊しても練習時間を設けて、海外公演もできるようにする」と発言。しかし、海外での公演は国防省の許可により可能でも兵役服務中の営利目的の公演は法的に許されない。そのため、収益は税金に帰属させるとしたが、入隊後に他の兵士と別行動させる、そんな特別扱いができるのか、ヘアスタイルはどうするのかなどの問題と合わせて現実味に乏しいと物議を醸した。