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チーム間での認識の食い違いに強い不信感

 ほどなく、医師から「これ以上頑張らせるより……」と告げられた中島さん夫妻は、泣きながら莉奈ちゃんに「助けてあげられなくてごめん」と声をかけた。莉奈ちゃんが0時4分に息を引き取った際、その場に立ち会った病院側の関係者はごくわずかだった。

 葬儀社を待つ間、病院では中島さん夫妻と警察を交えた話し合いが持たれた。しかし病院側は「『私たちには何の落ち度もない』という態度を崩さなかった」と邦彰さんは言う。

「『突然死です』『予想外のことで我々も驚いています』と言われました。でも当初は母乳の誤飲だとも言っていたし、莉奈の具合が悪いと何度伝えても数時間ほぼ何もせずに見ているだけだった。到底納得できる内容ではありませんでした。原因が不明だと言いながら、なぜ落ち度がないと言い切れるのかも疑問でした。そこで検査での肝臓の穿刺回数を尋ねたんです」

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「『3針です』と回答があったんですが、すぐさま別の医師が『4針です』と訂正を入れました。診察を受けたときには念のため2針と言われていたのに回数が増えていたので驚きましたし、何よりチーム間でどうして認識が食い違っているのかと強い不信感を覚えました」(朋美さん)

 中島さん夫妻の病院側への疑念を深めたのは、穿刺回数に関する説明の食い違いだけではなかった。

両親にとってはかけがえのない存在だった莉奈ちゃん

警察から受け取った死体検案書には…

「夫が『亡くなったんですから原因を明らかにしないといけないんじゃないですか』と問い詰めると、原因を明らかにするには海外に委ねなくちゃいけない可能性もあるというようなことを言われたんです。その場合は何百万という莫大な費用がかかって、それがすべて遺族負担になると。原因究明を諦めるようプレッシャーをかけられていると感じました」(朋美さん)

「でも、警察の方が『こんなに突然亡くなってるんですから、病院が何を言っていても原因をはっきりさせたほうがいいんじゃないか』と言ってくれたので、司法解剖を考え始めました。すると病院は『私たちに委ねてもらえれば病気の解明はできるけど、警察に渡したらもう調べられないですよ』と言い出したんです。余計におかしいと思って、病院側ではなく警察での解剖を決めました」(邦彰さん)

 莉奈ちゃんの死から数日後、中島さん夫妻は警察から死体検案書を受け取った。死因の欄には「肝生検に起因する出血死」と記載されていた。

「でも、初めて見るもので見方がよくわからなかったので、詳しい知人に見てもらったんです。すると『横隔膜に5箇所、肝臓には6箇所の穴が空いている』と書かれていることがわかりました。病院の説明では穿刺回数は3針とか4針と言われていて、そこでも説明が食い違っていたのに、実際は更に多かったわけですから心底驚きました」(邦彰さん)