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《横浜乳幼児医療過誤死》「顔じゅうの穴から血が出ていました…」致死率0.01%の検査で愛娘を失った父母が選んだ病院との「11年戦争」

《横浜乳幼児医療過誤死》「顔じゅうの穴から血が出ていました…」致死率0.01%の検査で愛娘を失った父母が選んだ病院との「11年戦争」

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 中島さん夫妻の病院への不信感は決定的なものとなった。9月末には病院から説明のため来院するよう求められたが、断ったという。

警察からの死亡診断書と病院側が作成した報告書に矛盾が

 すると12月、中島さん夫妻のもとに一通の報告書が送られてきた。病院側が作成したその報告書は、莉奈ちゃんの死因を「ミトコンドリアDNA枯渇症候群」と診断。さらに以下のように記されていた。

遺伝性の病気をにおわせる脅しめいた報告書

《「肝型ミトコンドリアDNA枯渇症候群」の患者さんの報告は極めて少なく、日本では論文となっている報告が1つしか見つかりませんでした。(略)この病気の経過はきわめて悪く、急性肝不全、血液凝固異常、多臓器不全、肝硬変などが原因で多くは1 歳までに亡くなってしまうようです》

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《遺伝性の病気であり、兄弟姉妹の報告も少なくありません》

 報告書を読んだ中島さん夫妻はひどく動揺し、ただただ呆然とするしかなかった。

病院側が自らの責任を否定したことにより、家族の生活は一変

「1歳ぐらいで亡くなる運命だったのだから莉奈のことは諦めろというニュアンスを感じました。しかも遺伝性の病気だと書かれていて、上の子もそろそろ危ないのか、子供がみんな死んじゃうんじゃないか、と不安が募ってきました。

 もちろん警察からの死亡診断書と矛盾しているとは思いましたが、医療の専門家の言うことを素人が簡単に無視できるわけもありません。上の子が寝ているときも、このまま死んじゃうんじゃないかと怖くて、眠れずにずっと寝顔を見ていることもありました」(邦彰さん)

「上の子は莉奈を大切に可愛がっていたので情緒不安定になって、部屋にこもり大声をあげて泣くこともありました。夫婦間でも、ミトコンドリア異常症を引き起こす遺伝子を持っていたんじゃないかとお互いの家族を疑ってしまったりして……莉奈が亡くなり、病院側が自らの責任を否定してミトコンドリア異常症を持ち出してきたことで、私たち家族の生活は一変したんです」(朋美さん)

◆◆◆

 あくまで死因はミトコンドリアDNA枯渇症候群だと主張し続ける病院に対し、不信感を募らせた中島さん夫妻は2017年10月に民事裁判を提訴した。なぜ莉奈ちゃんは死ななければならなかったのか、莉奈ちゃんの本当の死因は何なのか、それを知りたい一心だった。

 民事裁判では多くの医療関係者が病院側の言い分を否定する意見書を提出。さらに後には、莉奈ちゃんの蘇生を試みた医師や、研修医として術後管理を担当していたB医師までもが原告側に協力し、陳述書で真相を告白することとなる。そこから浮かび上がってきたのは、莉奈ちゃんの死を招いた病院側の杜撰な対応と、責任を逃れるための手段を選ばない隠ぺい体質だった。(後編へ続く)

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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