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「若手らしき方たちを引き連れていたのですが、『麻酔の効きが悪いということは肝臓が強いんだね。お酒に強いってことかな?』と言って笑いを誘ったんです。肝臓の数値が悪くて病院にかかっているのに、この言葉はないでしょうと思いました」(朋美さん)

急変したのはまるで親の責任だといわんばかりの説明

 この時点でC医師の指示により、莉奈ちゃんの腹帯が緩められた。他に検査や医療行為は行なわれなかったものの、ベテランの医師の診察がなされたことで、飲まず食わずで莉奈ちゃんに付き添っていた中島さん夫妻も少しホッとしたのだと言う。看護師からも「ご両親も休んでください」と言われたため、邦彰さんは飲み物を買いに病室を離れ、母はメモを取るなどして過ごすことにした。

 ところが、ほどなくして病室に戻ってきた邦彰さんは、莉奈ちゃんの顔を見て衝撃を受けた。

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「目の焦点が合っていなかったんです。慌てて妻がナースコールをすると、医師と看護師が駆けつけてきて、呼吸器をつけ始めました。私たちは看護師から『処置しますので部屋から出てください』と言われて、それから待合室のようなところでずっと待つことになりました」

 約1時間後、中島さん夫妻は女性のA医師から莉奈ちゃんに輸血する旨の説明を受けた。

「ヘモグロビンの値が低いので酸素を入れる必要があると。急変したのは、母乳が気管に入ってしまったことが原因だと言われました。不安で不安で座っているのがやっとの状態の中、まるで親の責任だといわんばかりの説明を受けて、妻は倒れそうになっていました」(邦彰さん)

強い決意でインタビューを受けた母親の朋美さん(仮名)

耳や鼻や口、色んなところから出血

「さらに2時間ほど待たされた後、19時ぐらいに少しだけ娘に会うことができました。意識はなく装置に繋がれている状態で、女性医師からは『呼吸の40回中20回は自力で呼吸しています』と説明されました。後遺症が残らなければいいねという話は夫としていましたが、それでもまさか亡くなるなんて思っていませんでした」(朋美さん)

 しかし、莉奈ちゃんの容態が悪化してから5時間ほどが経過した21時頃、「応援してあげてください」とNICUへ呼ばれた中島さん夫妻は、変わり果てた莉奈ちゃんの姿を目の当たりにした。

「莉奈は心臓マッサージを受けていて、耳や鼻や口、色んなところから血が出ていました。顔も身体も全身パンパンに腫れ上がっていて……『命が危ない』と言われて、目の前が真っ暗になりました。そんな状態なのに、23時ぐらいになると医師たちがだんだんとNICUを離れるようになって、『鼻血が出たので拭いてください』と呼ばないと来てくれなくなったんです。

 私たち家族だけになってしまう瞬間もあって、夫が『なんでみんないなくなっちゃうんだ』と言うと、やっと戻ってくるような感じで。駆けつけてくれた私の母も、看護師さんがあくびをしているのを見たと言っていました。あのときの絶望感は今でも忘れられません」(朋美さん)