イギリスの君主として歴代最長となる70年にわたって在位してきたエリザベス女王が、9月8日、静養先のスコットランドで亡くなりました。96歳でした。女王は今年、英王室史上初の在位70年という大きな節目を迎えましたが、ここまでの道のりは平坦ではありませんでした。2020年、ヘンリーとメーガンが発表した「王室離脱」。実はこの騒動の背景には、エリザベス女王とのメーガン妃の対立があったのです——。君塚直隆氏による「女王はメーガン妃を許さない」の一部を公開します(月刊「文藝春秋」2021年5月号より)

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亡くなったエリザベス女王

「#君主制廃止」がトレンド入り

「妊娠期間中、子どもの肌の色がどれくらい濃くなるのかという懸念や会話がありました」

「もう生きていたくなかった。はっきりそう思ったし、恐ろしいほどその思いは消えませんでした」

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 3月7日、アメリカのCBSテレビで、ハリー王子とメーガン夫人の2時間に及ぶインタビューが放送され、アメリカで1710万人、翌8日にはイギリスでも1130万もの人が視聴しました。

 焦点となったのは、冒頭に引用した、生まれてくる子の「肌の色」をめぐる王室内の差別の告白です。

 番組で夫妻のインタビュアーを務めたオプラ・ウィンフリーは、“黒人史上初めての億万長者”の異名を持つ国民的司会者です。2008年の米大統領選では、オバマへの熱烈な支持を表明し、その後のオバマ旋風のきっかけを作りました。いわばアメリカで最も影響力のある司会者です。

 しかも、アメリカは昨年起こったブラック・ライブズ・マター運動の余韻が残るさなかです。英王室が「肌の色の濃さ」を懸念したというショッキングな告白は、センセーショナルに報じられました。

 時に涙ぐみながら語るメーガン夫人の「告白」のインパクトは大きく、テニス選手のセリーナ・ウィリアムズや、歌手のビヨンセなど非白人系セレブが夫人への支持を次々に表明し、SNSでは「#君主制廃止」という言葉がトレンド入りしました。

衝撃的だったインタビュー番組

放送日にこめられた意図

 エリザベス女王の反応は迅速でした。放送から2日後に声明を出し、〈ハリーとメーガンにとってどれだけ困難な数年間だったか〉と寄り添う気持ちを表明したうえで、〈記憶と異なる点はあるかもしれないが、深刻に受け止め、家族で対処していく〉と発表したのです。

 ただ、注意すべきは、〈記憶と異なる点はあるかもしれない〉という表現です。事実関係については反論の用意があることをにじませています。ウィリアム王子は、もっとはっきりと「私たちは人種差別的家族では全くない」と断言し、弟のハリー王子夫妻の発言を全否定しました。