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 これは極めて珍しいことです。番組内でメーガン夫人は、結婚式の衣装をめぐってキャサリン妃とのあいだで問題が生じたことを認め、世間で言われているように自分がキャサリン妃を泣かせたのではなく、「泣いてしまったのは私」という告白もあったので、ウィリアム王子は憤りを感じたのでしょう。

「私たちが黙っているとでも思ったのかしら?」

 番組の放送日も、視聴者の関心を集める要因となりました。イギリスの放映日である3月8日は、英王室が大切にするコモンウェルス・デーだったのです。この日は、戦後も長らく続いたイギリスを頂点とする英連邦(British Commonwealth)という枠組みが廃止された後、加盟国すべてが対等の立場となりゆるやかな連合体に生まれ変わったことを記念した日でした。

 現在54カ国で構成され、インドやアフリカ、そしてカリブ海諸国など、非白人系の国々が数多く加盟しており、肌の色や宗教、文化の違いを超えた自由な連合体です。女王はこのコモンウェルスの象徴でもあります。

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 ハリー王子は結婚した2018年から、この「コモンウェルス青年フォーラム」の代表を務めていました。女王がコモンウェルスの未来のために新しい世代の声を生かしてほしいと、ハリー王子に大役を与えたのです。ですからハリー王子夫妻も、この日が英王室にとって重要な日であることはわかっていた。わかっていてぶつけてきたのです。

 番組では、ハリー王子夫妻が王室や家族、そしてメディアを挑発するような発言が繰り返された。

〈王室が私たちについてのデマを延々と流すことに積極的に関わっている場合、私たちが黙っているとでも思ったのかしら?〉(メーガン夫人)

〈父も兄も、(英王室に)囚われているんです。彼らはそこから出ることもできません。そのことをとてもかわいそうだと思っています〉(ハリー王子)

エリザベス女王

女王の耳には入っていた

 この番組が放映される前に何が起きていたか。これが今回の「告白」を読み解くポイントです。

 約半月前の2月19日、バッキンガム宮殿は、ハリー王子とメーガン夫人が、王室メンバーとして復帰しないことを女王に確約したと発表しました。昨年1月、王室離脱が大きな話題になりましたが、あれはあくまで仮決定で正式決定ではなかったのです。ハリー王子が若気の至りでカッとした可能性もあるだろうと考え、1年間の猶予を与えたのです。

 ハリー王子は、ラスベガスで全裸になったり、パパラッチと乱闘騒ぎを起こしたりした“問題児”ですが、祖母にしてみればハラハラさせる孫ほどかわいいこともある(笑)。アフガニスタンに従軍してノブレス・オブリージュを果たした点は高く評価していました。それで2人が考え直すのなら認めると温情を示していたのです。

 しかし2人が王室を離れる決断をしたので、2月の発表では、仮決定の通り「ロイヤル・ハイネス(殿下・妃殿下)」の称号の使用は認めないこと、ハリー王子が担っていた軍、連邦、慈善団体の役職や公務のほとんどは女王に返上されることが決まりました。

 女王は果断です。一線を越えたら容赦はありません。2人は、まさかぜんぶ剥奪されるとは思わなかったでしょう。実は、インタビュー番組の収録は声明の発表前に行われています。私は、収録前後に夫妻と王室が水面下で様々な交渉をしていたとしても不思議はないと思います。収録のことも、女王の耳には入っていたはずです。