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 私も夫妻のインタビューを見ましたが、メーガン夫人の告白から王室を批判することは危ういと思いました。第一、問題の発言を誰がしたのか、はっきりしないのです。メーガン夫人は、「ハリーから聞いた話です。それは家族が彼と交わした会話です」としていますが、発言をしたのは女王なのか王族なのか。もしかすると宮廷官僚のような側近の発言が話題に出ただけかもしれない。ハウスホールド(宮廷)と、ロイヤルファミリー(王族)は似て非なるものです。発言者を明示しなかったために、王室メンバー全員が疑われることになってしまいました。

 しかし女王や王族が人種差別的な発言をするとは思えません。というのも現在の王室メンバーは人種差別とは最も遠い存在だからです。

バッキンガム宮殿 ©文藝春秋

メーガン妃によるイジメ報道も

 評伝『エリザベス女王』(中公新書)を書くにあたって、私はウィンザー城ラウンドタワーの頂上にあるイギリス王室文書館に通い、閲覧が許されている、ありとあらゆる史料に目を通しました。

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 1952年、25歳にして英国君主に即位したエリザベス女王は、翌年に「コモンウェルス(旧英連邦)の首長」に就任し、肌の色や宗教、「人種偏見のない(カラーブラインド)」態度で、世界各地の首脳や人々に平等に接し、その務めを果たしてきました。特に、南アフリカのアパルトヘイト廃絶に女王が大きく貢献したことは、ドラマ「ザ・クラウン」などでイギリス国民の多くが知る事実です。

 番組の翌日、オプラがハリー王子から聞いた話として、「肌の色」に関する会話にエリザベス女王夫妻は関与していないと明言しましたが、女王の名代としてコモンウェルスの加盟国を巡回しているチャールズ皇太子夫妻、ウィリアム王子夫妻も、そのような差別的な発言をするとは考えられません。

 もし、王族の一員で差別的な発言をする可能性があるとすれば――唯一、思い浮かんだのは、女王のいとこにあたるケント公爵家のマイケル王子に嫁いだマリー=クリスティーヌ夫人です。彼女はメーガンが初めてロイヤルファミリーに紹介される日の食事会で黒人をモチーフにしたブローチを身に着けて批判を浴びました。過去にも、彼女のものとされる発言で物議を醸しました。もっとも、彼女に人種差別的な意識があるかどうかはわかりません。

 王族ではなく、宮廷官僚や王室スタッフによる発言だった可能性もあります。折しもメーガン夫人は、身の回りの世話をする王室スタッフとの確執が取りざたされていました。今回のインタビューが放映されるわずか5日前に、英「タイムズ」が2018年にスタッフ2人が辞職したのはメーガン妃によるイジメが原因だったことを報じ、王室が本格的な調査に乗り出しています。