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「選挙ほど人間のきれいなものと汚いものが見えることはない」安倍晋三の母・洋子が語っていた“安倍家ならではの選挙観”

『宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介を語る』より #2

2022/09/22
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若い世代の感覚がリードする

 晋三の応援については、もちろん主人の時代から応援していただいている方々のご支持を頼りにさせていただきますが、やはり本人の後援会、各組織の青年部などの若い方々の力が中心になるでしょうから、わたくしが息子の代理でしゃしゃりでるというわけにはまいりません。政治についても選挙についても、若い世代の考え方は主人の時代とは変わっているはずです。ここは晋三の感覚でリードしていかなければならないでしょう。

安倍晋三氏 ©文藝春秋

 以前、晋三がどなたかに、

「お母さん、お元気そうですが、なにか運動でもなさっておられますか」

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 と聞かれ、

「はい、選挙運動をしておりますので」

 と答えたという、笑い話のようなことがございました。

「ママも、たまに選挙活動をやったほうが健康にもいいんだよ」

 と、晋三はけしかけております。それにわたくしもついていこうと思っております。

 応援については、清和会の先生方や、わたくしの従弟の佐藤信二さん(衆議院議員)にも力を入れていただいておりますが、じつは竹下さんがたいへんに肩入れしてくださって、主人のお墓参りに油谷町においでいただいたとき、

「ぼくは晋三君のために、10回は応援に来るよ」

 とおっしゃいました。そのときの講演会では、

「自分がここに来るのは、派閥とかそういうものを離れて、私と安倍晋太郎君との友情で来るんです」

 と言われ、主人との親しい仲を力説されておられました。晋三の結婚披露宴のスピーチでも、たいへんなお褒めの言葉をいただきましたが、かなりお気持ちが入っておられる感じです。主人との関係で胸中に呵責がおありになるのか、主人に先立たれたことに返しようもない借りを感じておられるのか、後を継ぐ晋三を当選させ一人前にすることを、ご自分の責任のように感じていらっしゃるように、そのときお話しくださいました。

 地元で、また中央から、このような応援をいただけることは、まことにありがたいことでございます。主人もどんなにか喜んでいることでしょう。

安倍洋子氏 ©文藝春秋

二世議員に対しての批判

 ところで、二世議員に対して政治家の世襲、政治の私物化という批判があることは承知しております。晋三はたしかに主人の地盤から出馬いたしますが、その志を継ぐといっても、すべてを踏襲するわけではございません。

 いまのところは安倍晋太郎という存在がまだ大きいので、どこへ行っても父親の名前と影響の下で動かざるを得ませんが、晋三には若さを結集できる仲間がおり、外務大臣秘書官として世界を見てきた実績もあり、世界の中の日本を考え、国政に新風を吹き込む気概があります。安倍寛、岸信介、佐藤栄作、安倍晋太郎に伝えられた国家のために尽くすという覚悟があります。いずれ、安倍晋三という個性を発揮した政治家に育ってくれるように念じております。

宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介を語る

安倍洋子

文藝春秋

2022年9月22日 発売

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宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介を語る

宿命 安倍晋三、安倍晋太郎、岸信介を語る

安倍洋子

文藝春秋

2022年9月22日 発売

「選挙ほど人間のきれいなものと汚いものが見えることはない」安倍晋三の母・洋子が語っていた“安倍家ならではの選挙観”

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