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新幹線が開業し、今回導入された新たな方式

 整備新幹線が開通すると、並行する在来線はJRから切り離される。地元の足がなくなっては困るので、沿線自治体が第3セクター化するなどして路線を維持するのが常だ。しかし、西九州新幹線は長崎本線とかなり離れた地区を走る。「長崎本線が並行在来線とされて切り離されるのはおかしい」と、沿線の鹿島市などが反発したため、西九州新幹線では新たな方式が導入された。

 新幹線ルートから大きく外れる長崎本線の肥前山口-諫早(長崎県諫早市)間は、JR九州が引き続き運行を行う。しかし、鉄路などの施設維持は佐賀県と長崎県に譲渡されて、上下分離されることになったのだ。肥前鹿島駅はこの区間にある。

 ただし、鉄道施設の維持には経費がかかる。そこで電化区間は肥前山口駅から肥前浜駅(鹿島市)までとされた。肥前浜は肥前鹿島の一つ長崎側の駅だ。そこから先は諫早駅まで非電化の区間とされ、ディーゼルの普通列車しか走れなくなった。特急は電車なので、肥前鹿島が終着駅になった。

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NPO法人「肥前浜宿水とまちなみの会」が切符を販売し、観光案内もしている肥前浜駅
待合室にピアノが置かれていて、観光客らしい男性が弾いていた(鹿島市、肥前浜駅)

 一方、普通列車は上下3本ずつ増発されるので、「近場の通勤通学ダイヤとしては評価しています」と市役所の木原係長は語る。

 特急ダイヤはこれで減便が収まるわけではない。

減便を止めるためにするべき新たな「挑戦」

 というのも、博多方面への特急14本という新ダイヤは3年間の限定だ。その後の20年間は10本程度に減らされる見込みという。そうした結果、利便性が悪くなって乗客が減れば、「さらに本数を減らされかねません」と木原係長は危機感を口にする。

 非電化区間はもっと深刻だ。「JRにとって、肥前浜駅から先はたぶん『要らない路線』なのだと思います。でも、住民の足としては必要です。だからJRが少しでも『残したい』と考えるように、地元も努力していかなければ」と木原係長は焦りを隠さない。

 では、どんなことができるのだろうか。

 例えば、西九州新幹線が停車する「表通り」との連携だ。佐賀県内では武雄温泉駅、嬉野温泉駅である。

 武雄市と嬉野市は温泉地として有名だが、それ以外の観光資源に乏しい。「協力してツアーを組めば、新幹線駅か肥前鹿島駅を利用して来てもらい、昼間は鹿島市側で楽しんで、夜は温泉地に宿泊するというコースが組めます」と木原係長は説明する。

 鹿島市には見どころが多い。