JR西九州新幹線(武雄温泉-長崎間、69.6km)が9月23日に開業する。
地元では歓迎ムードが高まっているが、開業で“表通り”に躍り出る地区がある一方、これまで大通りだった「本線」で特急が大幅減便になるなど“裏通り”に転落する地区もある。
新幹線開業でできる「表と裏」。双方の地元はどんな思いでいるのか――。(全2回の1回目/#2へ続く)
「表」の代表的なまちは、武雄温泉駅がある佐賀県武雄市だろう。現在の佐世保線の在来線駅に、新幹線駅が併設され、ここが西九州新幹線の出発駅になる。
というふうに聞くと、あれっと思う人もいるのではなかろうか。「西九州新幹線の始発駅は佐賀県なの?」と。
これには歴史的な経緯がある。
佐賀県武雄温泉駅がJR西九州新幹線の始発駅になった理由
「九州新幹線」は福岡県の博多駅を起点として、鹿児島ルートと長崎ルートが計画された。そのうち鹿児島ルートは2011年に全線が開通。残る長崎ルートは武雄温泉駅までの整備を先送りし、とりあえず同駅から長崎駅までの「半分から先」を建設した。これが「西九州新幹線」と命名されたのだ。武雄温泉駅が始発となる理由だ。
ちなみに武雄温泉駅までの未完成区間は、整備方法さえ決まっていない。
このため博多駅から西九州新幹線にアクセスするには、現在と同じように特急列車に乗る。武雄温泉駅で新幹線に乗り換え、嬉野(うれしの)温泉駅、新大村(おおむら)駅、諫早(いさはや)駅と経て、終着の長崎駅に到着するのである。
ただし、武雄温泉-長崎間にあるのはたったの3駅。通過するのも佐賀と長崎の2県だけで、全線乗っても最速で23分。わずか23分間で走り終えてしまう新幹線なのだ。
山陽新幹線に置き換えると、博多-小倉間の営業キロ数とあまり変わらない。
さて、西九州新幹線の「表玄関」として一躍脚光を浴びることになった武雄温泉駅。新駅舎が完成し、新幹線車両の試験運行も始まったことから、さぞや華やかな雰囲気に包まれているのではないかと思って訪れると、まだ駅前広場は工事中で、重機がドカドカと音を立てていた。7月末のことだ。