武雄市と嬉野市にはない豊富な観光資源を活用せよ
ムツゴロウなどが生息し、見渡す限りの干潟になる有明海。「肥前鹿島干潟」としてラムサール条約の登録湿地になった場所もある。
祐徳(ゆうとく)稲荷神社は、京都の伏見稲荷大社、茨城の笠間稲荷神社と並ぶ「日本三大稲荷」とされ、年間の参拝者数は300万人に及ぶ。九州の神社では太宰府天満宮(福岡県太宰府市)に次ぐ数字だ。
肥前浜駅に隣接した旧街道筋の「肥前浜宿」には、古くからのまち並みが残っていて、2箇所が国の「重要伝統的建造物群保存地区」(重伝建地区)に指定されている。漁師や商人が住んだ茅葺(かやぶ)きの家が軒を連ねる一角と、「酒蔵通り」のあるエリアだ。酒蔵通りにはかつて十数軒の酒蔵があり、今も2蔵が酒造を続けている。白壁の土蔵造りだけでなく、洋風建築も建ち並ぶ。
干潟、稲荷神社、古いまち並み……。じっくり見て回れば1日掛けても時間が足りないほどだ。木原係長は「博多からの特急は14本に減りますが、逆に終着駅になることで、鹿島を目的にした人が来るようになるでしょう。以前に増して大切なお客さんが訪れることになるので、どうもてなしていくかが課題になります」と話す。
実は、市内にはもてなしに長けた地区がある。
雑誌が旅行特集を組むほどの人気“ツーリズム”とは…
肥前浜宿はその最たる例だ。以前は観光客が訪れるようなまちではなかった。古いまち並みが残っていることに注目した地元住民がNPO法人「肥前浜宿水とまちなみの会」を結成するなどして保存運動を行い、2箇所も重伝建地区に指定された。NPOは指定後も無人化された肥前浜駅での切符販売、観光案内などに取り組み、駅舎に隣接した建物では地酒飲み比べの日本酒バーを営業している。
「酒蔵通り」では毎春、市内の蔵元5社が中心になって「鹿島酒蔵ツーリズム」と名付けた蔵開きのイベントを開いている。
こうした取り組みや情報発信で多くの観光客が訪れるようになり、今では雑誌が肥前浜宿への旅行特集を組むほどになった。
「鹿島市には住民が行政に頼らず、自らイベントや地域づくりの活動に取り組む気風があります。そのパワーが観光地化に結びついたのが肥前浜宿です。JR九州も地元のイベントに合わせて博多から肥前浜駅に専用列車を走らせたり、ウオーキングの催しを連動させたりしてきました」と木原係長は話す。
JR九州は、1週間で九州各県を回る観光列車「36ぷらす3」を運行していて、長崎本線は毎週月曜日に通っていた。肥前浜駅には昼頃到着して1時間近く停車していたので、まちが散策できた。停車時間に合わせて駅前では地元住民が地酒や特産品を販売するマルシェも開いていた。