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――大自然の素晴らしさが、ゴキブリストへの扉を開いたのですね。一般にイメージされるゴキブリからかけはなれたゴキブリは、ヒメマルゴキブリのほかにもいるのですか?

柳澤 緑のバナナのような美しい色をしているミドリバナナゴキブリ。青緑色の体に黄色の模様を持つ豪華絢爛な見た目のキンイロゴウシュウゴキブリ。テントウムシのような模様と体形のテントウゴキブリ。まだまだたくさんあります。

ミドリバナナゴキブリのメス(写真:柳澤さん提供)

 また、そうした美しいゴキブリがいることだけでなく「屋内に出る種類より、屋外に生息している種が多い」ということも、あまり知られていませんよね。きっと、もし皆さんがそうした美しい姿をしたゴキブリに出会う機会があっても、それがゴキブリだとは思わないのではないでしょうか。

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 ヒメマルゴキブリなんかは、ことさらです。ゴキブリは「家に出てくる黒いヤツ」のイメージが固定化され、根強いですからね。

家のゴキブリは一生懸命でカワイイ

――その「家にいる黒いヤツ」については、今ではどう感じていらっしゃる?

柳澤 エサを与えると一生懸命食べてくれる姿なんかに、かわいさを感じています。ビジュアル面は、単純にあのフォルムがかっこよくて、大好きです。触角がピシッと伸びていて長く、ボディは流線型。ゴキブリは体がうすっぺらいというのも特徴ですが、結構完成されている形だなあと感心してしまいますね。

 中学の頃はオサムシ、カミキリムシなどの甲虫をやってたので、その時代「硬い翅を持たない虫は虫じゃない!」なんて言っていたのが嘘のよう(笑)。バッタやトンボ、ゴキブリもそうですが、当時は標本を作りにくいような虫は基本採らなかったんですよね。ところがゴキブリに興味を持ち標本をつくってみると、肢を引っ張っただけでちぎれてしまうとか、甲虫にはあまりない繊細さに驚きました。

 ゴキブリは、まるでカニのように繊維と一緒にシューッととれてしまうんです。これは、相当難しい。ゴキブリの標本を作り始め、改めて甲虫の頑丈さを知ると共に、バッタなど体の柔らかい生き物にも興味が出てくるようになりました。