――体の硬さが嗜好の分かれ目とは、なかなかに不思議な世界です。体が柔らかく、多種多様な種類が存在している虫は他にもいそうですが、「ゴキブリならでは!」というポイントはほかにもありますか?
柳澤 それはもう「嫌われている」という部分ですね。そこに大きなポテンシャルを感じています。嫌われているがゆえに、世間一般の関心が高かったり、防除のためにさまざまな商品が開発されていたり。そういった部分はゴキブリのオリジナリティであり、面白さがつまっています。
他の虫、例えばバッタなんかは、多くの種類がいて、様々な特徴があります。しかし人間との関わりを考えると、ゴキブリほどは深くないんです。ゴキブリは人間との関わりが非常に深いので、文化的な面白さもありますね。アース製薬のごきぶりホイホイなんかも、代を重ねていろいろなタイプが出ていたりして、対策法も多種多用です。
ゴキブリは武器になる
――職場である昆虫館では、ゴキブリ研究がどう生かされていますか?
柳澤 昆虫館の仕事というのは、虫の飼育などの実務的なことに加え、どうやったら虫を好きになってもらうかというアプローチが課題になっていきます。すると「なぜ昆虫が嫌いか」というところに、ゴキブリを嫌う風潮はリンクしやすい。一番嫌われている生き物なので。それを考えるのは面白いことです。
ゴキブリ研究をはじめたときは、もともとが生き物好きでしたから、まわりからは特に驚かれたりしませんでしたが、昆虫館で「ゴキブリスト」という名札をつけていることは、昆虫館にいらしたお客様から声をかけられやすくなった効果を感じています。
以前はカタツムリが得意という意味で「マイマイマイスター」という名札をつけていましたが、ゴキブリストのほうが断然声を掛けられる率が高まりました。会話のきっかけとして、ゴキブリは大きな武器となるんだなと実感できる毎日です。
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